【瀋陽=東慶一郎】新型コロナウイルス感染が広がる中国で、肺炎の治療法などに関するデマや真偽不明の情報が飛び交い、市民の混乱を招いている。
国営新華社通信は1月31日夜、「中国科学院などの研究で、伝統薬の『双黄連』が新型コロナウイルスを抑制することが分かった」という記事を配信した。双黄連は風邪薬の一種だが、インターネットを通じて情報が広まり、通販サイトでは売り切れが続出した。
この記事について、中国共産党機関紙・人民日報(電子版)は翌2月1日、「まだ初歩的な研究段階で、多くの実験が残っている。このウイルスの予防・治療薬はまだない」と報じ、むやみに服用しないよう注意を呼びかけた。
ほかにも「バナナを食べると新型肺炎にかかる」など根拠のない情報がネット上に出回っている。この影響でバナナが敬遠され、青果店では大量の売れ残りが出ているという。
ネット上の言論統制が厳しい中国では、有事の際、多くの人々が政府の公式発表よりも個人の発信する情報を信じる傾向がある。
SNSの微信(ウィーチャット)を運営するテンセントなどは、独自の「検証サイト」を開設した。政府の公式見解や専門家の意見を紹介するとともに、ネット上の情報について「デマ」や「事実確認されていない」といった判定を下し、不正確な情報を拡散しないよう注意を促している。
SNS事情に詳しい法政大の藤代裕之准教授(ソーシャルメディア論)は「検証サイトの判定根拠が政府見解では信頼度が乏しく効果が薄い。中国で口コミを抑え込むのは難しいのではないか」と指摘した。
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