D/Eセグメントで絶滅危惧種だが
ひと昔前と違って、いつの間にか新車でラインナップされているのはメルセデス・ベンツとBMW、あとはシボレー・カマロとミニぐらいになってしまった。今回の話題はあくまで4座カブリオレで、スパイダーやロードスター、むしろ幌がオマケであることを前提とするドロップヘッドクーペのような「スポーツ用途」のオープンではない。あくまで「エレガント用途の、しかしカジュアルでもあるオープン」として認識されるジャンルだ。ちなみに「カブリオレ」とは馬車の時代から使われてきた用語で、1、2頭の馬で引く軽快な2人乗り、かつ折り畳み可能な屋根を備えた2輪馬車のことだった。
公共交通機関に長時間、乗るのがためらわれる昨今、自家用の4座オープンほど、3密を避けられる移動手段はない。初夏の太陽の下、独りでも複数人数でも屋根を開け放って走り去る様子は、おそらく自粛ポリスにはスキャンダラスで、歪んだ嫉妬を喚起するだろうが、マスク着用と紫外線対策でもしておけば、元より咎められる云われはないが、そのいとまをも与えないだろう。
もちろん2000万円超の雲上クラスまで無制限に目を向ければ、ベントレーやロールス・ロイスは無論、メルセデスAMGのS63カブリオレやBMWのM8カブリオレ辺りまで車種は増える。だが、乗り出し700万円台以下で楽しめる4座オープンというのは、すっかり絶滅危惧種のようだ。
直近ではアウディが、A5カブリオレ45TFSIクワトロ・スポーツ(765万円)をカタログ落ちさせてしまったことは残念だが、まだディーラー在庫はあるかもしれない。いずれ欧州D・Eセグ相当のプラットフォームやコンポーネンツを用いた4座カブリオレというのは、プレミアム・ブランドなら揃えておいて然るべき車種なのだ。事実、前の世代のV60/S60まではC70カブリオレを擁していたボルボも、アメリカ市場を意識してISコンバーチブルや旧ソアラあらためSCを出していたレクサスも、今やSUVの販売台数は好調ながら、4座オープンの系統は途絶えさせたまま。とくにレクサスの2台は、高年式で程度良なら中古で250万円オーバーも珍しくないモデルなので、すっかり好事家物件になっていることがうかがえる。
効率重視では生き残りにくい
これら新興プレミアム・メーカーにとって、今や4座オープンが難しいジャンルとなった理由は、端的に3つ。ユーロNCAPによる衝突安全基準の厳格化により、元より台数も少ないカブリオレ・ボディを派生させるコスト自体が、煩わしいこと。2つ目は物理的な問題で、電動メタルトップのクーペ・カブリオレという形式は2000年代には隆盛したが、電動モーターで駆動すべき重い上モノを備えることは、屋根で覆うべき広い室内空間、省燃費や動的性能というエフィシェンシーとは、完全にトレードオフの関係になる。欧州市場でCO2排出量によるCAFE規制が今年から始まる以上、4座カブリオレはペナルティの元になる可能性の方が高い。妥協案は昔ながらの幌屋根を電動で開閉する方向だが、3つ目の難儀な理由として、駐車時の防犯性や、屋根を閉じて高速を走る時などの密閉性が足りないという、ファンよりネガつぶしを重視する乗り手のマインドもある。ようはカリフォルニアですら、陽光を浴びるより、EVで単独乗車でも、HOV(High-Occupancy Vehicles=多人数乗車)レーンを走れる方に素敵を感じる一般ドライバーが増えた、そんな効率重視の世の中で、4座オープンは生き残り辛くなっているのだ。
だからこそ、リアルにプレミアム・ブランドか否か? の要件は、オープンカーという非合理の塊のようなプロダクトを、乗り出し約700万円でラインナップ内に飼えるか否か? という点にある、と、そういっても過言ではない。非合理すら合理的に想定内のドイツ車とはいえ、ベントレーやロールスと規模は上でも収益率の異なるメルセデスとBMWは、リーマン・ショック以降も4座オープンを存続させるため、アクロバティックな工夫を重ねてきた。前者はEクラス、後者は3シリーズ、それぞれのセグメントで4座カブリオレの老舗であり続けてきたことはいうまでもない。
4座オープンの存在価値は上がるはず
まずメルセデスは先代Eクラスのカブリオレ、A207ことW212世代のそれを、下のクラスつまり3代目Cクラス(W204)のプラットフォームから誂えた。Cクラスをエクステンション的に使ってEクラスらしい広々した後席を確保したことは、守りの決断だっただろうが、続く現行W205世代のCクラスでは同クラス初となるカブリオレ・モデルを登場させたのはご存知の通り。
こちらA205は、MLAというEクラスやSクラスと共通のモジュラー・プラットフォームをベースとする。Cクラスのサイズ感がひと昔前のEクラス並みになった今日び、先代とは逆にEクラス的な造り込みのよさがCクラスにまで降りてきたとも、解釈できる。その意味で、役物ではないメルセデスの中で、もっともお買い得なモデルですらある。都下では、C180アヴァンギャルドの白・黒・銀を隣近所で見飽きたメルセデス乗りが増えたのか、C180カブリオレ、もしくは1000万円超クラスながらC43Sカブリオレ辺りは、頻繁に見かける1台となっている。4座に加え、幌屋根でも密閉感と耐候性も高く、最終的に背中を押してくれるのだろう。
一方、Cクラス・カブリオレに3シリーズの牙城を攻め込まれたBMWも、手をこまねいてはいない。3シリーズに伝統のカブリオレが君臨していたのは5世代目3シリーズ(現行は7世代目)までで、このE93の需要は、現行4シリーズ(F30)と先代2シリーズ(F20)という、それぞれのオープンモデル(F33とF23)へ上下2分割された。とはいえ、いずれの車種もラインナップ上では上位移行で、前者は現行3シリーズ(G20)より熟成を経たプラットフォームを、そして後者はFF化した現行1シリーズ(F40)と一線を画すFRレイアウトを貫いた点で、ラグジュアリーなFRの4座カブリオレという、BMW的な流儀にはむしろ磨きがかかった。ただし、440iカブリオレは非Mスポーツ仕様でも諸費用込み1000万円超で、M4カブリオレ・コンペティションなら1500万円クラス。電動メタルトップとはいえ、E93の時代よりはるかに割高には感じる。その分、220iカブリオレという、より軽快な幌屋根で600万円前半の選択肢が並んでいる訳だが、そこでも納得しづらければ、同じグループ内にミニ・クーパーのコンバーチブルが400万円アンダーである点も、BMWグループの巧いところではある。もちろんFRにこだわらなければ、という条件つきだが。
一方でドイツ車以外に目を向けると、シボレー・カマロのコンバーチブルも4座で、650万円を切る価格設定が際立つ。ベースとなるのはサルーンでなく、SSやRSなど同じカマロのクーペしかないことを思えば、頑張っている。アメ車としては他に、キャデラックがATSクーペだけでなくコンバーチブルも設定してくれればよかったのに……という気もするが。
いわば4座オープンは、新車で買えるうちが花。中古になっても意外とコアな需要は切れず、じつは思われているより値は下がらない。それが4座カブリオレの安定度と存在理由であることは、先代イヴォークのコンバーチブルも証明している。今、中古市場に20台もないながら、うち3/4は600万円オーバーで取引されているのだ。
オープンのSUVという早過ぎたコンセプトを受け継ぐように、直近ではVWのT-ROCカブリオレに日本上陸の可能性が残されている。またメルセデスのCクラスは今秋にW206世代へフルモデルチェンジが予定されているし、BMWの4シリーズも来年に同じくフルモデルチェンジを迎える。現実の世界での外出制限を誰もが余儀なくされた今、同乗者を2人以上も伴って、開放的に外出できる4座オープンという乗り物の存在価値は、大きく跳ねているはずだ。
文・南陽一浩 編集・iconic
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May 23, 2020 at 07:12PM
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