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Tuesday, June 16, 2020

新たな栽培法で挑戦 徳島市のハウスで育つバナナ 「SLOTH」 - 徳島新聞

写真を拡大 (左から)代表の辻健作さん、弟の喜多真一さん。「未来へと持続可能な農業を目指したいという思いを込めて、22世紀バナナと名づけました」。

 辻健作さん(32・徳島市出身)
 喜多真一さん(31・徳島市出身)

南国育ちのイメージが強いバナナが徳島で栽培されていると聞きつけ、半信半疑で訪問した。夏まではまだ遠い4月、徳島市名東町のビニルハウスでバナナの苗は一生懸命に葉を広げていた。苗のそばでは、「22世紀バナナ」とプリントされた揃いの赤いTシャツを着たスタッフが水やりや草取りに励んでいる。

 ここで栽培されている品種はグロスミッチェルという。終戦間もない頃から昭和30年代にかけて、バナナがまだ高級品として手に入りにくかった時代に流通していたものだ。しかし、20世紀半ばに流行したバナナの病気・パナマ病で壊滅的な被害を受け、その後はパナマ病に強い品種・キャベンディッシュが広く生産されるようになった。では今になってなぜグロスミッチェルを栽培することにしたのか?

 サボテンやユニークな見た目の食虫植物など、注目度の高いインテリアグリーンのレンタル業を行うSLOTH(徳島市)代表の辻健作さん(32・徳島市出身)が、バナナの栽培に乗り出したのは2018年春のこと。岡山県の農業法人D&Tファームでバナナを栽培していることを知って衝撃を受けたことが発端だ。冬に0℃近くまで下がる岡山の気候ではバナナは育たないと言われていたが、開発者の田中節三さんは、昔食べた甘みの強いグロスミッチェルをお腹いっぱい食べたいと研究に取り組んだ。地球上の植物が氷河期を乗り越えてきた歴史に着目し、バナナの種子に氷河期を疑似体験させる実験を繰り返した。そして、ゆっくりと180日間かけてマイナス60℃まで冷却する「凍結解凍覚醒法」を見い出し、バナナの潜在能力を目覚めさせ、低温地域でも育つ耐寒性を持たせることに成功した。この手法は、苗の生育スピードが速く、病気に強いため農薬に頼らなくて済むという副次的なメリットも生んだ。

写真を拡大 虫が取れるかもと、試しにぶら下げた食虫植物のウツボカズラ。袋の中には小さな羽虫が入っている。

 辻さんはこう話す。

 「バナナはいちばん身近なフルーツなのに99%以上が輸入ものです。今スーパーに並んでいる多くがキャベンディッシュって種類ですが、その生産国では10年ぐらい前から新たなバナナの病気(新パナマ病)に悩まされています。高地で栽培したり、収穫時期を早めたり工夫していますが、まだいい対処法が見つかっていない状況です。この先、バナナが安定して手に入るか不安があります。D&Tファームで昔よく食べられていたグロスミッチェルが無農薬栽培されてるって知ったとき、国内で育てられるバナナがあるなら早く作って、子どもたちに食べさせたいってシンプルに思ったんです」。バナナについて調べれば調べるほど、人にも自然環境にも優しい方法でバナナを育ててみたいという思いが強くなっていった。

 2018年2月、弟の喜多真一さん(31・徳島市出身)とスタッフを伴い4人で岡山を訪れた。「バナナが実っとる光景を見たんはあの日がはじめてで、僕ら感動しすぎて、子どもみたいに“うわー、バナナがホンマになっとう!”って声に出したよな」と、喜多さんがスタッフに笑いかける。その日、辻さんたちの情熱はD&Tファームに伝わり、苗を分けてもらえることが決まった。

 その後、スタッフが岡山で農業研修をスタート。同時期に、ハウスを建てるための土地探しを始めた。徳島市から離れればいい土地はあったが、できれば生活圏内で、今までどおりの暮らしをしながら農業ができる環境を整えたいと考えたため、名東町に土地が見つかるまで1年を費やした。

写真を拡大 もともと田んぼだったところ。土地をかさ上げし、ハウスを3棟建てた。

 2019年11月にハウス3棟が完成し、今年2月に凍結解凍覚醒法で改良されたグロスミッチェルの苗を265本植えた。ハウス内の気温は15〜30℃に保たれ、葉焼け防止のため日光を70%遮断する白いネットが張られている。「バナナが嬉しそうなんは25℃前後やけん」と、ハウスの天井に取りつけたファンを回してぬくもった空気を外に逃がす。土壌の状態や水やりの頻度など、生育条件に不安が生じたらD&Tファームに連絡して教わる。農薬を使わないため、ハウスの中でバッタやハンミョウ、カエルなどが姿を見せるようになった。葉についた虫を見つけたときは水で洗い流したり、歯ブラシで優しくこすり落としている。4月末時点で、大きい苗で高さ1m20cmほどに育ち、株も強くなってきた。ハウス内はまだゆとりがあるが、房がつく11月頃には3mまで伸び、1つの苗から100〜150本のバナナが収穫できる予定だ。

写真を拡大 楽しそうに水やりする辻健作さん。「無農薬だから、栄養価の高い皮ごと食べられるんですよね。葉っぱは食器として使えるし、繊維が多い茎は紙や衣類として使い道があって、バナナは捨てるところがないです」。

 「年内の出荷を目標にしています。僕たちが岡山ではじめてバナナを見たときのような感動を味わってもらいたいので、収穫体験を開きたいですね。ジャングルみたいになったハウスの中で、子どもたちがどんな反応をするか今から楽しみです」。辻さんたちは愛おしそうにバナナの成長を見守っている。 

>>見学希望者は、info@sloth.styleにメールを。「お気軽にどうぞ」と辻さん。

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June 17, 2020 at 03:01AM
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