
森での散歩から帰ったら、靴下にマダニが付いている。あるいは池で泳いだあと、体についたヒルを引きはがさねばならない──。そんなとき、たいていの人は、これらの“寄生虫”に嫌悪感を覚えることだろう。自分の腸内にいるかもしれない寄生虫にいたっては、考えたくもないほどだ。 地球上の生物は、あまりに急速な環境変化に適応できていない:研究結果 人間にとっても動物にとっても、寄生虫は厄介者である。病気を運んでくることもあるし、寄生されれば体が弱ることもある。だが、ある研究者のグループは、「寄生虫をもう少し見直すべき」という科学的に異端ともいえる説を展開している。
リスを守る寄生虫も
おかしな話に聞こえるかもしれないが、一部の動物は寄生虫に大いに助けられて生きている。そうした動物にとって寄生虫は生存に不可欠だというのが、その研究者たちの主張だ。 例えば寄生虫のなかには、宿主の免疫系を調節してバランスを保つものや、体内に取り込まれた有害物質を取り除いてくれるものもいる。それゆえ、絶滅危惧種に保護が必要であるのと同じように、あらゆる動物に寄生する回虫やダニ、シラミ、ヒルなどの寄生虫も保護されるべきだというのだ。 「寄生虫に対する考え方を改める必要があります」と、ロサンジェルス自然史博物館の陸生哺乳類担当アシスタントキュレーターであるケイシー・C・ベルは言う。「寄生虫はうまく付き合っていくべき重要な生き物です。寄生虫は宿主にとって有益なこともありますが、あまりに研究が少ないので、生態系でどのような役割を果たしているかわかる前に絶滅してしまう危険性があります」 ベルは、ジリスの遺伝的多様性を研究しているうちに、寄生虫がジリスの個体群の健康を保っていることに気がついた。実際に何種かの寄生虫は、宿主であるジリスとともに進化して、命にかかわるほかの寄生虫に寄生されないようジリスを守っているのだと、ベルは言う。
寄生虫が教えてくれる動物の進化
ベルは、生態学者と野生動物の専門家からなる共同研究グループのメンバーでもある。このグループは、寄生虫をより詳細に調査・保護する計画を立てた。 12項目からなるその計画は、8月に科学誌『Biological Conservation』に掲載された。そのなかでベルたちは、研究者は野生動物を調査する際、寄生虫がその動物に害をなしていると考えてピンセットでつまんで取り除くのではなく、その役割を把握し、保存しておく必要があると指摘している。 例えば、パンダやオオカミといった大型の動物を野生から動物園へ移動させるとき、あるいは生息地間で移動させるとき、通常はその体に付いていたシラミやマダニを取り除く。だが、それは最善のやり方ではないかもしれないと、ノースカロライナ州立大学の応用生態学助教授であるスカイラー・ホプキンスは言う。 「動物を移動させるときには、その動物にどのような寄生虫が付いているか確かめ、それらも一緒に移動させるべきか考えるべきです」と、ホプキンスは言う。「パンダなどの生態をよく知っていると思う動物についてすら、そこに寄生する寄生虫を全種類は把握できていません」 寄生虫を利用して宿主の進化の過程をたどる研究も進行中だ。研究者のなかには、クジラのはがれ落ちた皮膚を食べる小型甲殻類の寄生虫を集めて、絶滅の危機に瀕したセミクジラの進化の過程を探っている者もいる。 また、絶滅の危機に瀕したガラパゴスノスリを研究している生物学者は、この鳥の羽につくハジラミを調べることで、この種がいつ、どのようにガラパゴス島に定着したか、各個体群がどのようにかかわっているかを解明しようとしている。ハジラミの家系図をつくることで、このノスリがハジラミを体につけたままどう島から島へ移動したかが示され、各島の個体群間の関係を明らかにする上で役立つのだ。
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August 27, 2020 at 10:13AM
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この地球では、寄生虫も絶滅の危機に瀕している:「レッドリスト」の作成を呼びかける研究者たちの真意(WIRED.jp) - Yahoo!ニュース
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