
固有種を含む動物の宝庫で「フェンスのない動物園」とも呼ばれるオーストラリア南部のカンガルー島。2019年末から20年1月の大規模な森林火災で島の約半分が焼け、4万1000匹以上のコアラが死んだりやけどを負ったりしたとされる。かつての楽園は荒野と化したが、新たな命が誕生。避難先の本土で暮らすグループもおり、絶滅回避への取り組みが進む。
「火災でコアラが減ってしまった」。サウスオーストラリア州のカンガルー島西部にある私設のハンソンベイ野生動物保護区の共同経営者、ジム・ゲディズさんが言う。
約2000ヘクタールの敷地は昨年1月に全域が焼けた。煙を吸い込んで肺を損傷したほか、焼けて熱いままの木を移動するなどした際に手足に負ったやけどが原因で死んだコアラも。島中部に設けられた臨時の動物病院では約800匹が治療を受けた。
それでも、火災後、保護区で少なくとも5匹の赤ちゃんコアラを確認した。荒廃した環境での生命誕生に、ゲディズさんは「自然の奇跡としか言いようがない」と驚く。
もともとカンガルー島にコアラはいなかったが、1920年代に本土から18匹が放たれ、2019年までに約5万匹(推定)まで増えた。餌となるユーカリの木が著しく成長した10~15年に劇的に増加したという。
本土のコアラは多くが失明や不妊症の原因となる性感染症のクラミジアにかかっているが、カンガルー島では感染がない。本土でコアラが減り地域によっては死滅の恐れも指摘される中、カンガルー島は安全地帯とみなされてきた。
保護区で救出されたコアラのうち28匹は約200キロ離れた同州都アデレード近郊の野生動物園に引き取られた。現在、専用のおりで育てている。
前園長のクリス・ダニエルズさんは「28匹にスタッフを1人ずつ配置し、毎日決まった時間に餌をやり、集中的にケアした」と振り返る。コアラは腹を壊すと、あっという間に脱水症状に陥って死に至ることがある。カンガルー島とは違う種類のユーカリを餌にせざるを得ず、適応させるのに細心の注意を払い、飼育は困難を極めた。
搬送から5カ月で5匹が死んだが、メス2匹の腹の袋に赤ちゃんがいることが分かり、飼育員を喜ばせた。
カンガルー島のコアラは近親交配が原因で遺伝的な疾患があるとされる。遺伝子の多様性を広げるため、別の地域から健康なオスを迎えて交配させることで疾患を解消し、健康な「スーパーコアラ」を殖やす計画も進んでいる。(カンガルー島、アデレード 共同)
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