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Saturday, October 30, 2021

ハイセンスの液晶2枚重ね「デュアルセル」TV、その映像美は有機ELを超えたか? - GIZMODO JAPAN

amparipisang.blogspot.com

美麗ディスプレイといえば有機ELが主流の昨今ですが、ディスプレイ技術も進化を続けています。中国の電機メーカーHisense(ハイセンス)は、最近液晶を2枚重ねることで従来の液晶の弱点をカバーしたデュアルセル技術を打ち出しました。そのデュアルセル搭載の75インチTV、Hisense Dual Cell ULED 4K 75U9DGを米GizmodoのWes Davis記者がレビューしてますので、見ていきましょう!


最近有機ELテレビの対抗馬として、Mini LEDとかmicroLED(まだまだ一般家庭には大きすぎるし高すぎる)、QLEDといったディスプレイ技術が話題です。それでも有機ELは、パフォーマンスと価格という意味でベストの座を維持しています。

そんな現状に殴り込みをかけてるのが、Hisense Dual Cell ULED 4K 75U9DG(以下U9DG)です。この長々しい名前の中のキーワード、「デュアルセル」とは民生用では新しい技術で、ローカルディミングとメインスクリーンの裏の第2の液晶を組み合わせた技術です。それによって黒のレベルを有機ELパネル並みに真っ黒に落としつつ、液晶らしい明るさも維持しようという狙いです。

さらにU9DGは、リフレッシュレートが120Hz、HDR10+にDolby Vision対応、自動明るさ調節のDolby Vision IQ対応でもあります。可変リフレッシュレートにより画面のちらつき・ガタつきに対処、FreeSyncにAuto Low Latency Mode(ALLM)対応でゲームの入力ラグ最小化にも配慮しています。ハイセンスはU9DGの実現を、「われわれにとっての月面着陸」と誇りを込めて呼んでいます。

U9DGは今のところ75インチのみなので、僕はかわいそうな妻と一緒にこの巨大TVを地下室に運び込み、キャリブレーションを走らせ、1カ月間熱心に映画を鑑賞し、ゲームをプレイし、画面を間近に見て、この有機EL対抗馬が3,500ドル(約40万円)の価値があるのかを見極めようとしてきました。

Hisense Dual Cell ULED 4K 75U9DG

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Image: Wes Davis – Gizmodo US

これは何?:有機ELディスプレイの服を着た、初めての液晶TV

価格:3,500ドル(約40万円)

好きなところ:有機EL並みのコントラスト、有機ELを超える明るさ、ARCやCECとの相性良し、色再現が素晴らしい

好きじゃないところ:電力消費がすごい、映像のガタつき・モーションブラーあり、内蔵スピーカーは低音が心もとない

巨体を立ち上げる

大物ガジェットの常として、U9DGを箱から出すにはデリケートさが必要とされ、最後までビクビクしながらやりました。重さ100ポンド(約45kg)近いのでひとりじゃ絶対無理です。脚を取り付けるときは、背面を下にして床に置きネジで下の穴にくっつけます。ポートが横向きに付いてるので配線はすごく簡単ですが、ポートの位置が中央寄りなので、パネルの横からケーブルが見えることはありません。配線が終わったら、ケーブルをきれいにまとめるクリップ型パネルも付属してます。

クイック設定では、OSのAndroid TVが出てきます。Android TVはもうGoogle TVに進化しちゃってるんですが、このU9DGのOSはなぜかAndroid TVのままです。なのでユーザーとしては古いのを承知で使い続けるか、新しいOSを使いたい人はGoogle Chromecastをくっつけるか、になります。

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スペースエイジ感あるスタンド
Image: Wes Davis – Gizmodo US

U9DGにはHDMIポートが4つ付いてます。ふたつは120Hzのデバイスをつなげられて、そのうちひとつはeARC対応です。120Hzじゃないポートは60Hz、どれも4K対応です。USBポートもふたつあり、USB 2とUSB 3は各ひとつなんですが、それぞれのポートのラベルがUSB 1とUSB 2になってるので微妙に混乱します。あとは電波とかケーブルTV用のコークスケーブルポートに、3.5mm A/Vポート(これ用のアダプタもついてます)、ヘッドホンジャックもあり、そのそばにはギガビットイーサネットポートとか光学オーディオ出力といったポート群もあります。隣にはシリアルポート、サービスポートです。

U9DGの入出力系で良かったのは、(少なくとも僕が使ってる間は)CECとARC/eARCがバギーじゃなく、ちゃんと使えたことです。僕はTV音声のメイン出力先としてApple(アップル)のHomePodをしばらく使ってるんですが、U9DGと一緒に使う上で面倒なことはほとんどありませんでした。ARCとかCECで手を焼くことが多いので、この点は新鮮でした。

アンチミニマル?なデザイン

TVってほとんどが黒い直方体で、どうとでもやりようがあるものの、最近は画面以外の部分を極力最小化する傾向にあり、スタンドくらいはちょっとクールにしちゃおうかな、みたいなデザインが目立ちます。メーカーの努力のほとんどはベゼルを細くすることに割かれがちですが、U9DGの場合、特にベゼルが太いってわけでもないものの、宣材写真の印象よりは明らかに太いです。

さらに時代に逆行するように、スタンドには『スタートレック』とかに出てきそうなスペースエイジ風味が効いてます。スピーカーグリルはシャイニーなガンメタルグレーで、横から見ると薄いプリズム状に盛り上がり、両端ではスピーカーホールがスーッとグラデーション状に少なくなるデザインも入ってます。ミニマルなものが多い最近のTVの中ではちょっと変わってるのかもしれませんが、スピーカーを隠そうとするメーカーが多いこの世界であえて新しいことにチャレンジした、という見方もできるでしょうか。

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背面の模様とポート類
Image: Wes Davis – Gizmodo US

背面には斜めチェックみたいな模様が全面に入ってて、端の方が薄くなり、以前のiMacと同じように薄さを演出しようとしてるようです(それほどうまくいってませんが)。チェック模様のほかにあるのは、ボルトの穴と600×400のVESAマウントの穴、そしてポート用のくぼみです。

で、デュアルセルとは?

上の方でチラっと、デュアルセルは民生用TV業界では新しいと書きました。「民生用では」と限定した理由は、そのベースの技術であるLight Modulating Cell Layer(LMCL)に関しては、Flanders ScientificのXM311Kみたいな超高価な映像業界のプロ用モニターではすでに使われてるからです。普通の液晶ディスプレイは、液晶の層に光を通すとき、弱い電流で液晶の向きを変えることで映像を作り出しています。液晶の向きによって、光はそのまま通ったり弱まったりするんですが、完全に止めることはできません。なので、黒い部分も有機ELディスプレイみたいな完全な黒じゃなく、暗いグレーになってしまいます。LMCL(デュアルセル)が普通の液晶と違うのは、解像度の低い第2の液晶パネルがあって、そこで光をさらに弱めメインの4Kパネルに到達する光をさらに減らせることです。普通の液晶がただの布マスクだとしたら、LMCLはN95マスク、そして光がウイルス…といったイメージでしょうか?

このたとえが適切かどうかはさておいて、U9DGはこの液晶2枚重ねによって、静的コントラスト比で150,000:1、動的コントラスト比が2,000,000:1という、既存の液晶のベスト(最高でも8,000:1を超えるのがやっと)とはケタ違いになっています。つまり明るい部分と暗い部分の差が、今までの液晶とは段違いに際立ってるのです。

ただ、液晶パネルが2枚あるということは、有機ELに対する唯一の優位性である明るさ(あとは焼きつき耐性も?)を確保するために、バックライトをガンガンに明るくしなきゃいけないってことでもあります。この点がやたらと電力を消費するという欠点につながります。スペック表では最大400Wで、僕が電力計で見てもだいたいコンスタントに315Wでした。体感としてもその通りで、TVから1フィート(約30cm)以内に近づくと画面から出てくる熱が感じられます。参考までに、SONY(ソニー)の有機ELテレビ BRAVIA XRはだいたい50〜60Wで、すごく明るいシーンでも100W台中盤になる程度です。

狙い通りのコントラスト!

最初にも書いたように、ハイセンスのデュアルセル技術は有機ELレベルのコントラストを目指してます。その最終目標を果たしたかというと、その答えはまったくイエスです。U9DGの黒は肉眼では有機ELの黒と見分けがつかないほどで、Mini LEDのような色にじみもまったくありません。さらに明るさも強く(最大1,000ニトと、液晶として最大まではいかないもののかなり明るい)、映画鑑賞にぴったりのメリハリある映像です。最近レビューしたソニー XR-A80Jと比べてみたんですが(その結果は後述)、影が黒へと変化していく部分では、A80Jは変化が急過ぎるのに対し、U9DGはより細かいディテールが見られました。デュアルパネル技術のメリットは明らかです。

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Image: Wes Davis – Gizmodo US

U9DGにはいろんなモードが入っていて、HDR設定だけでもいくつかプリセットされたものがあり、さらにDolby Vision、IMAX Enhanced、それにFilmmaker Modeがあります。Dolby VisionとIMAX Enhancedは聞いたことがある人でも、Filmmaker Modeは知らないかもしれません。Filmmaker Modeはモーション処理機能の多くをオフにして、色やシャープネス、フレームレート、アスペクト比を映像作者の指定通りに設定するモードです(でも、ユーザーはこれら全部を変更可能)。U9DGにはFilmmaker Modeが使える場合はそれを自動検知・適用する機能があり、その機能は設定でオン・オフ可能です。

ともあれ、どのモードにしてもみんな美しく、色再現も有機EL並みのコントラストも素晴らしいです。Dolby Vision IQはU9DGのコントラスト比をフルに表現するのに特に適していましたが、このモードだとモーションスムージングをオフにできません。その点では、デフォルトのモーションスムージングは僕の好みよりもちょっとやりすぎでしたが、これに関してもいくつか選択肢があり、個人的には「Film」という設定が一番控えめだと感じました。

痛恨の欠点

U9DGは映像がきれいなときはすごくきれいなんですが、かなり目につく欠点で、しかも修正方法がわからないものも2、3ありました。ひとつはモーションブラーで、メニューをスクロールしたり2Dゲームをプレイしたり2Dアニメを見たりしてるときにはっきり出ちゃってました。第2の像がくっついてくる形で、とくにアニメを見てるときはひどかったです。アニメでは少ないフレームに動きがたくさん詰まってることが多くて、U9DGでは各フレームの表示が長引く傾向があったので、動くシーンが残念になってしまいました。

もうひとつはAndroid OSを使って視聴してるときだけ起きた問題なんですが、いろんなコンテンツの中でかなりカクカクすることがあるんです。どういうときに起こるのか規則性がわからなかったんですが、画面の動きが一瞬止まってまた動きだし、間のフレームが飛ぶんです。ハイセンスいわく、この問題は認識していて対応中とのこと。HDMI経由でコンテンツを入力してるときは問題なかったので、ストリーミングデバイスを持ってる人とか、DVDみたいな物理メディアで何か見ることが多い人なら大丈夫そうです。でも、Android OSを使って視聴する人は、少なくともこの問題が修正されるまでは、がっかりしちゃうかもしれません。さしあたりの対処としては、モーションスムージングを「Film」設定にすることで多少はマシになりました。

あとはU9DGを変な角度から見ると、特に間近で見る場合、画像がぼやけることがあり、一定以上近づくとドロップシャドウ効果的なものが見られます。色の鮮やかさがやや失われて、明るさも若干下がります。でも、どっちみちそんなに間近で見たらコンテンツはちゃんと見えないので、この辺は大した問題じゃないです。

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真っ白な画面ではカラーシフトが
Image: Wes Davis – Gizmodo US

色再現性は全般に素晴らしいんですが、グラデーションの中でごくわずかにバンディング(本来は存在しない筋が見える)がありました。あとは真っ白の画面だと、ピンクか緑へのカラーシフトが出てました。上の『ファーゴ』のタイトル画面で、それがはっきりわかります。

最後に、今回VRRみたいな派手なゲーミング機能は試せなかったんですが、Nintendo Switchをつないでゲームしたときは、動きが滑らかで反応が良かったです。見た目的には、デフォルトの「Game」モードがやりすぎない程度に色鮮やかで、ぴったりでした。

Google Assistantは普通に使えます

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Google Assistantを呼び出すとライトアップ
Image: Wes Davis – Gizmodo US

個人的には、僕はTVにあんまり話しかけません。僕はデバイス内蔵の機能よりも自分の手持ちのセットトップボックスを使うタイプで、良くも悪くもアップルのエコシステムにだいぶお金をつぎ込んでたので、U9DGに入ってるGoogle Assistantのメリットはあまりありませんでした。でも、もしグーグル派の人なら、ハイセンスはグーグルの機能をうまく取り込んでるし(といってもGoogle TVじゃなくAndroid TVを入れてるのですが)、Google Assistantを呼び出すとスピーカーの下の4つのライトが光るのも健気です。マイクはときどき僕の言葉を聞き間違えることがありましたが、それはハイセンスのせいじゃなく、Google Nest Miniより多いってことも少ないってこともありません。GoogleアカウントをTVに入れておけば、Google Assistantは想定通りに動きます。

スピーカーは自前で

3,500ドル(約40万円)の巨大TVを買う人なら、自前のスピーカーももともと持ってるんじゃないでしょうか。でも、たとえば映画の最中に自前のオーディオシステムが壊れたとしても、U9DGの内蔵オーディオで急場はしのげます。でも、そんなときも多分、なる早でちゃんとしたシステムを復旧したくなることでしょう。U9DGはDolby Atmos搭載ですが、それでも音の深みがなく、音量を上げると音が割れるってほどじゃないですが、やっぱりオーディオ専用デバイスを使いたくなる人が多いことでしょう。

買う価値ある?

U9DGはすごく良いTVで、素晴らしいコントラストに影の部分の細やかなディテール、優れた色再現、滑らかなゲーミングを楽しめます。ただどうしても引っかかるのが、このお値段です。3,500ドル(約40万円)出すとしたら、今回見たようなモーションブラーとか映像のガタつきとかは(後者はHDMI経由のコンテンツではなかったとはいえ)ありえないです。ただしBlu-rayとか外付けのストリーミングデバイスを使ってるなら、上に書いたようにガタつき問題は回避できます。そしてVRRみたいなゲーム用機能が入ってるので、ゲーマーの人たちもソニーXR-A80JよりU9DGを高く評価すると思われます。

それでも映画大好きな人にとっては、今のところやっぱり有機ELが王道となりそうです。

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