Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
台湾大学と国立政治大学、米メリーランド大学による研究チームが開発した「FrictShoes: Providing Multilevel Nonuniform Friction Feedback on Shoes in VR」は、VRの臨場感を高めるために、足に多段階の不均一な摩擦フィードバックを与えるローラースケート型ウェアラブルデバイスだ。
6つの車輪が底に備わったこのデバイスは、ユーザーがVR内で遭遇する異なる地面を歩行した際の滑り具合や、バナナの皮や路肩の溝の蓋のような異なる質感を踏んだときの触覚を表現する。
このようなVR内での歩行や何か踏んだときの触覚を再現するデバイスは、これまでも多くで研究されてきた。しかし、形状、大きさ、粘性、硬さなどを表現するものが多く、今回のような摩擦に対してのアプローチは少ない。今回は車輪を使って、足裏の摩擦フィードバックを表現することに挑戦する。
デバイスは、3Dプリントされたフレームに車輪とブレーキ、DCモーターで構成する。片足に3×2のレイアウトで6つの車輪が備わっており、それぞれの車輪に独立制御のブレーキシステムを整備している。重量は約530g。
市販のローラースケートやインラインスケートの車輪は大きすぎるため、PLA素材を用いて3Dプリントでリム(直径:20mm、幅:20mm)を造形した。車輪に十分な摩擦を与えるために、ミニ四駆用のゴムタイヤ(幅:9mm)を各リムに2本並べて貼り付け、車輪径を約6mm増加させた。
ブレーキは、3Dプリントされたブレーキシェルに自転車用のゴム製ブレーキパッドを貼り付けた。このシェルは、ウォームドライブ機構を用いたDCモーター(ギア比26:1)で制御する。自転車用ブレーキによくある、ゴムを押し付けて止める仕組みだ。
このブレーキが車輪を異なるレベルでブロックすることで多様な抵抗力を発生させ、VR内で質感の異なる地面を踏んだときのさまざまな摩擦を表現する。前輪4輪を制動し、後輪2輪を解放するなど、異なるレベルの車輪を独立して制動することで、ユーザーが物体を踏む際に2段階の摩擦を表現し、不均一な摩擦フィードバックを実現する。
ブレーキを全てロックした状態にすると、ローラースケートに近い形状でありながら、従来のポーズで通常の歩行もできる。
足の動きをトラッキングするため、ユーザーの足の甲にはViveトラッカーを装着し、VRコンテンツと今回のウェアラブルデバイスを連動するようにした。
ユーザーが地面などの各対象に対してどのような摩擦力の大きさを感じているかを調べ、4段階のレベルで摩擦力を定義した。一定の地面だけの条件では、氷原が最も滑りやすく、次いでタイル床、木床、砂利道、タール道となった。地面中に何かある条件では、バナナの皮が非常に滑りやすく、路肩の溝の蓋が続いた。
バナナの皮を足の裏全体で踏まないケースもあるため、つま先付近だけで踏んだ際には、前の車輪2個だけを滑りやすいレベルに制御したりと段階的な表現で臨場感を高めている。
Source and Image Credits: C. -A. Tsao et al. “FrictShoes: Providing Multilevel Nonuniform Friction Feedback on Shoes in VR,” in IEEE Transactions on Visualization and Computer Graphics, doi: 10.1109/TVCG.2022.3150492.
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