最近よく聞かれる「アップサイクル」。リサイクルやリユースとの違いを説明できますか? 食品ロス削減はSDGsの目標のひとつ。廃棄食材のアップサイクルで、食品ロスを減らそうという取り組みが注目される。
食品ロスを2030年までに半分にできる!?
農水省によると、日本の食品ロス量は年間約570万トン(令和元年度)。一人当たり1日約124g。毎日お茶碗1杯分のごはんをムダにしているのに近い。年間では約45kgのロス。これは一人当たりの年間の米消費量53kgに近い量になる。この食品ロスの量を2030年までに半分にしましょうというのが、SDGs12番「つくる責任 つかう責任」の3つめの目標である。
こうしたSDGs意識の高まりもあって、廃棄食材・食品を利用したアップサイクル食品が注目されている。
アップサイクルとリサイクルとの違いは、元製品より価値が高まっているかどうかだ。リサイクルは、元の状態より付加価値は下がる。たとえばペットボトルは、一度フレーク状に粉砕され、プラスティック製品の原料になる。この状態の商品価値はペットボトルよりも低い。アップサイクルは、本来廃棄される食材を使って製品化されるので、元の状態より商品価値は高い。
ちなみに米国のアップサイクル食品協会によれば、アップサイクルとは「本来であれば人間の消費にまわらない原材料を使い、監査可能なサプライチェーンを有して調達・生産された、環境によい影響をあたえるもの」と定義されている。
食品のアップサイクルは食品ロスの削減だけでなく、生産者や加工場が被る負荷を軽減にもつながる。食品ロスは、その商品価値が0円になるだけでは済まない。生産費用が回収できないだけでなく、廃棄するにも費用がかかるからだ。食品ロスは長い間、生産者、食品加工業者にとっても大きな問題だった。
最近、お酒業界のアップサイクルのニュースをよく耳にする。廃棄パンを原料に使ったクラフトビール、コロナ禍で廃棄せざるを得なくなったビールを原料にしたジン、大手でもアサヒビールが廃棄予定のコーヒー豆を使ったビールをつくるなどなど。
食品業界はどうか。食品宅配の大手オイシックス・ラ・大地のアップサイクルに注目したい。以前から食品ロスを減らすことには積極的な会社であるが、2021年7月、農産地や加工場から出る食品ロスを利用したオリジナル食品ブランド「Upcycle by Oisix」を立ち上げた。今年3月末までの9か月間で、約27トンのフードロス削減を達成している。当面の目標は、「年間500トンの削減量。3年後に20億円の事業規模を見込んでいます」と、ブランドマネージャーの三輪千晴さんは話す。
オイシックス・ラ・大地の三輪千晴さん(右)と、有楽町マルイ1階の「アップサイクルマーケット」開催ショップCRAZY KITCHENのCEO土屋杏理さん(左)。
バナナの皮も、なすのヘタも食材になった
現在、有楽町マルイ(東京千代田区有楽町)で、オイシックス・ラ・大地の「アップサイクルマーケット」が開催されている(5月15日まで)。試食してみた。売り場は、1階のCRAZY KICHTENという食品のコンセプトショップだ。
有楽町マルイで15日まで開催の「アップサイクルマーケット」。
食品ロスから生まれた食品がずらりと並ぶ。場所柄、また母の日を意識したセレクションで、ちょっとしたプレゼント、また自分へのごほうびにピッタリの、かわいらしいパッケージが並んでいる。
パッケージに表記された原材料名を見て驚く。
なすのヘタ。大根の皮。バナナの皮。ブロッコリーの茎。梅酒づくりに使った梅。これらは廃棄食品とかフードロスというより、そもそも“食べもの”として認知されていない部分ではないか? 梅酒に使った後の梅は食べる人もいるが、食材かといえばかぎりなくグレーではないか。しかし、これらがみんな食材になる。
ブロッコリーの茎も大根の葉をカリッと揚げ、チョコレートクランチに加工。具材はすべて野菜。「ここも食べられるチョコクランチ くき&かわ」(734円)。
バナナの皮が食材に!? 有機バナナの皮、約20%使用のジャム。「ここも食べられるジャム バナナの皮ごと」(630円)。
食べてまた驚いた。おいしい! 価格は決して安くない。だが、一部の有機食品にありがちな、値段は高いが味はあまり変わらない食品とは違って、価格に見合うおいしさだと思う。
皿の左上「ここも食べられるチョコクランチ くき&かわ」は、サクサク感とほんのり野菜の香り、おそらく“こんなチョコ初めて感”も味わえる。右上「梅酒から生まれたドライフルーツ」(538円)は梅酒づくりに使われたあとの梅の実のドライフルーツ。しっとり、もちっとグミのような食感、梅酒のうまみがギュッと凝集されている。右下「ここも食べられるジャム バナナの皮ごと」はバナナの甘みがさわやかに広がる。ヨーグルトにかけてもシリアルにかけてもおいしい。
オイシックス・ラ・大地には生産者や加工工場をはじめとした取引先や仕事パートナーの“困りごとを解決する”ことも目標にしている。「Upcycle by Oisix」ブランドの創設で、「3年後には100社の困りごと解決をめざす」としている。
今回の有楽町マルイのアップサイクルマーケットでは、主に野菜と果物素材のアップサイクル食品が並んでいるが、オイシックス・ラ・大地が4月にローンチした「サステナブルマーケット」では、魚介や肉、ハム、ソーセージといった食材のアップサイクルも生産、販売されている。これらの食材を見ていると、廃棄食品はまるで宝の山だ。
SDGsが掲げる2030年までの目標値は2000年度比で273万トン。現在は約570万トン。アップサイクル食品の原料と、食品ロスの内容物は単純にイコールで結べるものではないが、おいしいアップサイクル食品が開発され、価格的にも手に取りやすいものが増えてくれば、食品ロスは着実に減らせるのではないだろうか。そのための新しい技術や市場の誕生につながることも期待できる。今年、アップサイクル市場はどこまで伸びるのか?
●「アップサイクルマーケット」イベント情報
有楽町マルイ1F 4/27〜5/15 11時〜20時
取材・文/佐藤恵菜
からの記事と詳細 ( バナナの皮も、なすのヘタも食材に!オイシックス・ラ・大地が本気で仕掛けるアップサイクル食品事業|@DIME アットダイム - @DIME )
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