人はストレスがたまると、甘いお菓子が食べたくなるものだ。2月末、新型コロナウイルス対策の全国一斉休校措置がとられて以降、スイーツ類の売上が上昇している。
■東京の洋菓子店の売上が前月比で3割増
まだはっきりした統計はないが、3月前半に日本洋菓子協会連合会の役員から、東京の洋菓子店の売上が前月比で3割増という情報を得た。この時点では、家にいる子どものご機嫌取りで買いに行って、ついでに家族のために余計に、という行動だったと思われるが、4月下旬の現在もお菓子の勢いは続いている。
とくにネット通販が好調で、コンビニでも冷蔵スイーツコーナーの減りが従来より早いように見える。普段それほど食べない人も、癒しを求めてつい買ってしまうのだろう。?
デパ地下に入っているような大手メーカーは休業して通販中心にシフトしているが、いわゆる街のお菓子屋さんは、「お客さんが来るから」と、休むに休めないようだ。人気パティシエの洋菓子店には、引きも切らぬ来客を、入場制限と手指消毒でさばいているところが少なくない。新型コロナで危機に瀕している飲食業界にあって、例外的にお菓子屋さんは忙しい毎日を送っている。
■緊急事態宣言後は家でのお菓子作りが広がっている
7都道府県に緊急事態宣言が出て、本格的巣ごもり生活がスタートしてからは、家でお菓子の手作りに励む人が増えてきた。これまで時短・手抜き・作り置きでなんとかクリアしてきた日々の食生活に、突如として時間ができて、嗜好品の菓子作りにまで手がまわる余裕が生まれたわけだ。?
ケーキやクッキーのホームメイドがブームになったのは、はるか前の1970年代、専業主婦率がピークだった頃。それ以降、大きなブームは起こっていないから、画期的な現象だといえる。?
日本より早くロックダウンがはじまった欧米では、#quarantinecooking(隔離クッキング)のタグ付けをして、手作り料理やお菓子をSNSにアップするのが流行している。特筆すべきは、小麦粉とイーストがスーパーの棚から消えてしまったことだ。?
緊急事態宣言で米備蓄に走った日本人が多かったように、欧米人は小麦粉をパニック買いしたのかと思ったら、家にいるからパンでも焼こうという、趣味と実益を兼ねたホームベーキングの色合いが強いようだ。
■日本で「バナナケーキ」が流行り始めている理由
日本の場合、流行しつつあるのが「バナナケーキ」の手作り。SNSでもレシピや写真の投稿数がじわじわと増えている。そもそも、前から「タピオカミルクティーの次はバナナジュース」と予測されていたので、液体のジュースが固形のケーキに変わったかたちだが、理由はそれだけではない。
まず、バナナケーキというアイテムから見えてくるのは、作っているのは、ひょっとしたらケーキを焼くのは初めて、という超初心者が多いことだ。長方形のパウンド型で焼くことが多いので、パウンドケーキの仲間のように思えるが、実はこれ、ものすごく簡単に作れるアメリカの「クイックブレッド」の一種なのである。?
クイックブレッドとはベーキングパウダー(膨張剤)で膨らますパンや菓子のこと。具はバナナ以外に、キャロットやコーン、ズッキーニも人気がある。
パウンドケーキより甘みが控えめであっさりしていて、果物や野菜たっぷりなので、ヘルシーな感じがする。おまけに小麦粉の比率が多いので、おやつだけでなく、一食になるボリューム感もある。バターの量が少なく、サラダ油でも代用でき、材料費はパウンドケーキより経済的だ。
■簡単すぎて商品にしづらい
パウンドケーキは、バター、砂糖、卵、小麦粉を1パウンドずつ使うのが名前の由来。フランスでも、カトルカール(4分の1が4つという意味)と呼ばれる。とにかくバターと卵の量が多いので、このふたつを完璧に乳化させ、濃厚さを感じさせない味と、しっとりふっくらの食感に焼き上げるには、確かな技術を要する。洋菓子店の必須で定番の商品になっているのは、プロのパティシエが作るにふさわしい菓子だからだ。
対して、バナナケーキを売っている店は、ほぼ皆無。なぜなら現在、日本の洋菓子の主流であるフランス菓子のパティシエにいわせると、バナナケーキは「あれをいったい誰が下手に焼けるの?」というくらい簡単すぎて、商品にしづらいからだ。ただ混ぜるだけで、ベーキングパウダーの力で放っておいても膨らむので面白みが少なく、おまけにコンビニでも買えるバナナでは、プレミアム感が出せない。?
■ホットケーキミックスを使えばあとはバナナ・卵だけあればOK
お店で売っていないから、自分で焼かないと食べられない。逆にいえば、あまりにも手近な材料で、誰でも失敗せずに作れることこそが、バナナケーキの強みだ。ということで、ネット上ではバナナケーキのレシピがたくさん見つかるが、もともと王道から外れたお菓子だから、これぞと決まった定型や基本がない。?
そのなかで、多数のレシピに共通するのが、ホットケーキミックスを使うこと。あらかじめ小麦粉と砂糖、ベーキングパウダー、香料が配合してあるので、あとはバナナと卵だけあれば、立派なバナナケーキが完成する。ここにバターかサラダ油、砂糖を足せば、もっとリッチな味になる。バナナは手かフォークでつぶせるし、混ぜ合わせるのに繊細さは不要。ミキシングはビニール袋で事足り、特別な器具はいらない。オーブンを使わず、フライパンや炊飯器で焼くのも当たり前だ。?
これだけ超簡単なお菓子だから、正直いって、パティシエが作るように素晴らしくおいしくはない。バナナを入れすぎると、ねっちりもっちり、羊羹のような食感になることもある。バナナの水分量があるぶん、生焼けも起こりやすい。だが、それもご愛敬。完璧でなくても、自分で手作りしたという体験が素晴らしいのである。手作り菓子は、店と違った味なのが、おいしいのである。?
■お菓子のホームメイドは定着するか
70年代のホームメイドブームは、チーズケーキが火付け役だった。材料を混ぜるだけのレアチーズケーキでホームメイドの楽しさに目覚めた人はみな、クッキー、マドレーヌ、パウンドケーキ、ショートケーキ、シュークリーム……と、少しずつレベルアップしていった。?
お菓子作りには、料理とはまた違う、工作や手芸に似た喜びがある。食べれば、心を癒やす効果も得られる。コロナがいったんおさまったとしても、ワクチンが開発されず第2波、第3波のおそれがある以上、外食マインドは薄らいだままで、内食・中食へのシフトは続くだろう。だが、お菓子のホームメイドが定着するか否かは、日常生活に余剰時間を持てる働き方ができるかにかかっている。それ以前に、経済が冷えきってしまっていたら、それこそ菓子作りどころではなくなっているはずだ。
ストレスフルなときに、甘いものがないのは、甘党ならずとも悲劇。濃厚接触には、一緒に食事をすることも含まれる。人との食事を自粛しなければならないなら、なおさらお菓子を作ったり食べたりする幸せだけは、手に届くところにあってほしい。?
(畑中 三応子)
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April 29, 2020 at 10:00AM
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