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Friday, May 1, 2020

「人類の最底辺だ!」台湾で開発“コロナ不謹慎ゲーム”に中国ゲーマーブチギレの理由 - ニフティニュース

 近年、中国大陸と香港(さらには香港をサポートする台湾)の若者同士の感情的な対立はどんどん強まっている。それが特に爆発しやすいのがインターネット空間だ。

 とはいえ、大部分の海外製のウェブサービスへのアクセスがブロックされている中国大陸の若者と、接続規制のないネット環境を享受している香港や台湾の若者とでは、日常的に出入りするウェブサービスが異なる。Twitterでは親体制的な意見を投稿する中国人のアカウントも少なからず見られるが、彼らは「五毛」と称される当局のネット工作員も多く、しばしば無視されてしまっている。

 だが、リアルな中国人と、リアルな台湾・香港人の若者がオンライン上で接触せざるを得ない空間も存在する。それはゲーム関連のサービスだ。特に香港で大規模な反政府デモが発生した昨年夏以来、ゲームの空間内やファンコミュニティ内における中国大陸と香港・台湾の衝突はエスカレートするばかりだ。

■コロナを拡散させる“不謹慎ゲーム”とは?

 たとえば今年4月後半、中華圏で大いに話題を集めたのが、台湾のゲーム開発グループMythZsGameが開発した『コロナウイルス・アタック』である。アメリカのValve社が提供しているゲームプラットフォーム「Steam」上で販売されている、ダウンロード専用のソフトだ。

 Steam内での説明文によると「感染すると自分勝手なゾンビに変わるゾンビウイルス」の蔓延を食い止めるために、コロナウイルスを操ってゾンビたちを倒す……という設定のシューティングゲームである。

 プレイ動画を確認する限り、『コロナウイルス・アタック』のグラフィックは約四半世紀前のスーパーファミコンソフトといい勝負。ゲーム性もかなりシンプルで、実質的には同人ゲームに近い。

 いっぽう、ゲーム中において、赤い背景に黄色いコロナウイルスが登場する画面は、インターネット上で流布されている五星紅旗(中国国旗)のコロナコラージュ画像とそっくりだ。

 また、ゲーム中の合言葉には「秘密の数字198964」「台湾は中国ではない」「光復香港時代革命」「新疆を釈放せよ」「FREE TIBET(チベットに自由を)」などが使用され、ソフトの価格も台湾元で「64元」となっていた。

 もちろん「光復香港時代革命」は香港デモのスローガンだ。また、中華圏で「8964」や「64」といった文字列は1989年6月4日に発生した六四天安門事件を意味しており、中国大陸ではタブーワードとなっている。

 往年、日本でもデジタル空間の利用者たちのお行儀が悪かった時代には、地下鉄サリン事件がモデルの『霞ヶ関』や香港返還がモデルの『香港97』など、時事問題をテーマにした数多くの不謹慎ゲームが作られた。今回の『コロナウイルス・アタック』もその一種とみていいだろう。

■中国ゲーマー、ブチ切れる

 もっとも当然ながら、中国はこの手のお遊びを許せるほど心が広くない。『コロナウイルス・アタック』がリリースされた4月24日から数日も経たないうちに、中国国内のSNS『微博』上には「#中国を侮辱するゲームは人類の最底辺」というハッシュタグが登場した。

 4月26日には、親体制的な論調で知られる中国の大手紙『環球時報』が、「中国を侮辱するゲーム」を非難する記事を発表。「明らかな反中国と台湾独立(を支持する立場)の徴候がある」と怒りを示す。

 また、当然ながら『コロナウイルス・アタック』のSteam販売ページのコメント欄には、中国大陸から書き込まれた罵倒と、香港や台湾から書き込まれた称賛があふれ、さながら香港デモの代理戦争のような状態となった(4月29日現在、評価は「好評」687件、「不評」139件となっている)。

 やがて4月26日ごろから、中国側でSteamの『コロナウイルス・アタック』のページが表示されなくなったため、中国人ネットユーザーは自分たちの抗議によって悪質なゲームがBAN(削除)されたと大喜びする。だが、実はSteam側が中国のIPアドレスから当該ページへのアクセスを弾いていただけであることが後になって判明した。

 台湾側ではこれについて、王定宇という民進党所属の立法委員(国会議員)が「台湾の表現の自由が守られた」と歓迎する声明を自身のFacebookに投稿。おふざけゲームが、ずいぶん大きな波紋を広げることになっている。

■“あの政治活動家”がプレイ動画生配信

 中国ではGoogleやTwitterをはじめとした海外の大部分のウェブサービスへのアクセスがブロックされているが、Steamは中国からアクセスが可能な数少ない海外資本のサイトのひとつである(後述)。中国国内のSteamユーザーは約3000万人とする推算もある。

 ただ、それゆえに政治的な問題とは無縁ではない。今年4月には『コロナウイルス・アタック』問題以外にも、Steamのサービス上の「国家」分類で中国と台湾が別の国扱いになっていることが中国国内のSNS上で指摘されて炎上する事件が起きた。

 いっぽう、かつて香港の雨傘革命の指導者の1人だった政治活動家のジョシュア・ウォン(黄之鋒)は一連のニュースを受け、4月21日に「面白そうだからSteamのアカウントを作ったぜ」と本人のFacebookに投稿。1.7万件もの「いいね」を集めた。

 さらにジョシュアは28日、このSteamアカウントで購入した『コロナウイルス・アタック』のプレイ動画をYouTube上で公開配信している(動画参照)。

 動画を見ればわかるが、かなりのゲーマーであるはずのジョシュアですら、プレイ開始当初はゲームオーバーを繰り返している。『コロナウイルス・アタック』は、「ネタゲー」のくせに意外と難易度が高いようである。

■オンライン上でも「デモ鎮圧発生」

 ゲームの世界における中国大陸と香港・台湾との対立は、コロナウイルスやSteamへのアクセスの話だけにとどまらない。

 たとえば昨年末には、人気オンラインアクションゲーム『グランド・セフト・オートV(GTA V)』のゲーム中で、中国人と香港人の争いが発生している。

 GTA Vは自由度が高いオープンワールド型のゲームだ。しかも、2019年12月12日のアップデートでキャラクターが使用可能な服装やアクセサリーが増えた結果、ある香港人のユーザーが、黄色いヘルメットとガスマスク、黒い服という「香港デモ隊ルック」にプレイキャラクターを着せ替えられることを発見してしまった。

 そこで多数の香港人ユーザーが、デモ隊ルックで集まり「Stand With Hong Kong」というグループに加入する。彼らはゲーム内でパトカーに火炎瓶を投げたり、駅を破壊したりして遊んでいたところ、業を煮やした中国側の愛国的ゲーマーがこれに対抗して、やはりゲーム内で警官隊を組織。催涙弾を打ち込むなどして戦闘におよび、結果的に人数が多い中国側が勝利したという。

■『あつまれ 香港デモの森』

 また、2020年3月20日に任天堂が発売した『あつまれ どうぶつの森』(通称『あつ森』)に関連した騒動も有名である。

『あつ森』は、プレイヤーが無人島で「なんでもできる」という自由度の高いゲームだ。登場するのは優しいデザインの平和的なキャラクターばかり。オンラインでの他のプレイヤーとの交流も売りのひとつだった。

 新型コロナウイルスの流行によって外出を控える動きが広がるなか、4月19日までに361.1万本(ダウンロード版の売り上げを除く)を売り上げる大ヒットを記録している。

 いっぽう、『あつ森』は発売の直後から、主に香港のユーザーたちがゲーム内で政治的なディスプレイを多数おこない、そのプレイ動画やスクリーンショットがネットに大量にアップされたことでも話題になった。

 すなわち、香港デモのスローガンである「光復香港時代革命」のほか、新型コロナウイルス肺炎を指す「武漢肺炎」や、その初期のクラスター発生地とされる「武漢華南海鮮批発市場」といった政治的に敏感な文字列の看板や、習近平やキャリー・ラム(林鄭月娥)香港行政庁官、親中的とされるWHOのテドロス・アダノム事務局長らの顔写真が遺影として掲げられるような事例が多発したのだ。

 また、例によってゲーム中のキャラクターに黒シャツとマスク、ヘルメットの「デモ隊ルック」を着させたり、オンライン上で複数のプレイヤーが集まって「光復香港時代革命」のようなデモのスローガンを集団で叫んだり、習近平やキャリー・ラムの顔写真をみんなでぶん殴ったりするような動きも見られた。

 結果、4月10日ごろまでに中国国内のオンラインショップから『あつまれ どうぶつの森』の取り扱いが消滅してしまう。もともと、このソフトは中国国内では正式に販売されておらず、日本や香港などで流通しているソフトが中国国内のオンラインショップで売られているだけだったのだが、それすらも許されなくなってしまった形だ。

■ゲームの世界でも鎖国する中国

 ちなみに現在、ゲームのダウンロード販売を取り扱うニンテンドーeショップやプレイステーションストアは、中国市場向けのものについては中国専用のサイトが提供されている(=中国当局の厳しい表現規制に合致するゲームのみが販売されている)。今回の記事で取り上げたSteamについても、今後はおそらく同様の状況になりそうだ。

 なぜなら、Steamは昨年8月から中国企業の「完美世界(Perfect World)」社と提携して中国国内向けの市場展開に力を入れており、今年4月26日には完美世界がSteam向けに中国国内でドメイン取得をおこなったことが明らかになったからである。

 つまり、今後はSteamにおいても、中国人ユーザーは中国人専用サイトに囲い込まれるということだ。

『コロナウイルス・アタック』のようなゲームが炎上したり、自由度が高いオープンワールド型のゲーム内部で、中国人ゲーマーが中国政府にとって都合の悪い政治的メッセージに触れてしまったりするハプニングも、今後は減っていくとみられる。

 言い換えれば、中国人はゲームの世界ですら、中国共産党の基準における「政治的に正しい」価値観のみに触れて生きていくことになるということなのだ。

(安田 峰俊)

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May 02, 2020 at 05:00AM
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