ASRockの小型ベアボーンキット「DeskMini X300」が、10月9日に税別1万9880円で発売される。前回は従来モデルとなる「DeskMini A300」からの進化点などをチェックしたが、今回はパーツを組み込んで、ベンチマークテストを中心に新モデルの魅力を見ていこう。
ベンチマークテストで性能を確認!
テスト環境は下記の通りだ。APUは旧モデルのDeskMini A300でRyzen 5 3400GとAthlon 3000Gを使い、DeskMini X300では現状最上位のRyzen 7 PRO 4750Gの他、Athlon 3000Gを使った。また、メモリについては2400MHz動作のSamsung「M471A1K43CB1-CRC」(8GB×2)と、3200MHz動作のCrucial「CT16G4SFD832A」(16GB×2)の2種類で行っている。
ベンチマークテストの環境 | |||||
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APU | Ryzen 7 PRO 4750G | Ryzen 5 3400G | Athlon 3000G | ||
開発コード名 | Renoir | Picasso | Picasso | ||
アーキテクチャ | Zen2 | Zen+ | Zen | ||
コア数 | 8コア16スレッド | 4コア8スレッド | 2コア4スレッド | ||
キャッシュ(L2+L3) | 12MB | 6MB | 5MB | ||
動作クロック | 3.6GHz〜4.4GHz | 3.7GHz〜4.2GHz | 3.5GHz | ||
TDP | 65W | 35W | |||
GPU | Radeon Graphics | Radeon RX Vega 11 | Radeon Vega 3 | ||
GPUコア | 8 | 11 | 8 | ||
グラフィックス周波数 | 2100MHz | 1400MHz | 1100MHz | ||
ストレージ | 500GB WD BLACK SN750(WDS500G3X0C) | ||||
メモリ | 8GB DDR4 SDRAM(DDR4-2400)×2、16GB DDR4 SDRAM(DDR4-3200)×2 | ||||
OS | 64bit版Windows 10 Home(2004) | ||||
APUの税込み価格 | 4万4000円前後 | 2万円前後 | 7300円前後 | ||
早速、ベンチマークテストでX300とA300を比べてみよう。
まずはストレージの性能を見るべく、CrystalDiskMark 7.0.0を使ってWD Black SN750 NVMe(SSD)をテストした。APUはAthlon 3000Gと16GBメモリ(8GB×2)でそろえている。
続いて、PCMark 10などでX300とA300を比較する。
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2種類のメモリクロックでテスト
まずは、メモリを16GB(2400MHz駆動/8GB×2)の状態でX300とA300を比較した。なお、UEFIの設定はデフォルト設定(Auto)で、ここからのグラフでは緑系のスコアはA300での値を意味するので注意してほしい。
CGのレンダリングスピードからCPU性能を測定するCINEBENCH R20では、A300で最も高速だった4コア8スレッドのRyzen 5 3400G(Zen+)に対し、現時点で最速のAPUである8コア16スレッドのRyzen 7 PRO 4750G(Zen 2)ではマルチコアで実に2.56倍、シングルコアでも1.23倍に飛躍しており、まさに圧倒している。
なお、メモリを3200MHz駆動の32GB(16GB×2)に変更したところ、シングルコアはほぼ変わらず、マルチコアも1〜2%の向上にとどまった。
実際のアプリケーションを使ってシステムの総合性能を見るPCMark 10では、CINEBENCH R20ほどではないが、メモリ16GBの状態でもRyzen 7 PRO 4750Gを搭載したX300が、Ryzen 5 3400G搭載のA300に対して総じて上回った。具体的には総合スコアで9%、Productivityで22%ほど高速になっている。さらに同じAPUのAthlon 3000Gにした状態でもX300の方がおおむね好スコアをマークした。
一方、高速なメモリ(32GB状態)にしたところ、X300は元よりA300でもスコアが向上しており、少しでも性能にこだわりたい場合は高クロックのメモリを搭載するのがお勧めだ。
続いては、APU内蔵グラフィックスの性能を見るべく、3DMarkや「漆黒のヴィランズ ベンチマーク: ファイナルファンタジーXIV」を実施した。後者は「高品質(デスクトップPC)」とし、画面解像度を1920×1080ピクセルと1280×720ピクセルで比べている。
Radeon RX Vega 11 GraphicsのRyzen 5 3400Gは、GPU SP数が704基で動作クロックが1400MHzなのに対し、Ryzen 7 PRO 4750GのRadeon Graphicsは512基で2100MHz駆動となる。3DMarkではいずれのテストでもX300のスコアが良かった。特にNight RaidではRyzen 5 3400Gに対して約1.5倍、Sky Diverでも約1.25倍と大きな差がついており、フレームレートも60fpsを超えていた。
ただ、DirectX 12を使用するテスト「Time Spy」やDirectX 11を使用する「Fire Strike」といった内蔵GPUにとって高負荷なテストでは、さすがのRenoir(開発コード名)でも荷が重く、フレームレートは一桁台〜20fps前後だった。
また、メモリクロックの影響が大きいグラフィックスのテストだけに、より高速なメモリとなる32GBの状態ではそれぞれのテストで確実に上積みがあり、フレームレートを底上げしたい場合は、ぜひ高速なメモリを用意したいところだ。
ファイナルファンタジーXIVでは、Ryzen 7 PRO 4750Gの1280×720ピクセルで5355の「とても快適」、1920×1080ピクセルでは3035の「やや快適」だったが、メモリを32GBにすると、それぞれスコアが上がって「とても快適」「快適」となった。
こちらも、メモリを高速化するとスコアの向上が顕著で、フルHDの解像度なら快適に遊べそうだ。
次に、気になる騒音について見ていこう。
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搭載するAPUでは風切り音が気になる場面も
最後に気になる騒音についてだが、CINEBENCH R20を実行しながらiPhoneアプリの「デジベル X」で計測(本体から15cm離れた場所で計測)したところ、X300+Ryzen 7 PRO 4750Gの組み合わせでは最大51.7dBでシステム全体の消費電力は118W、Athlon 3000Gでは42.5dB、48Wだった(UEFIはAUTO設定)。ちなみに、A300+Athlon 3000Gは40.5dBで48Wという値だ。
A300では高負荷時でもあまり気にならなかったノイズだが、X300では搭載するAPUによってファンの風切り音が耳障りに感じる場合もあった。X300になってヒートシンクが大型化したが、静音性を重視する場合はサードパーティー製のファンなどの導入を検討したいところだ。
一方の発熱は手の触れる部分で気になるところはなく、アイドル時の消費電力は10W未満で収まるなど優秀だった。
小型かつ高性能で優れた拡張性も魅力
DeskMini X300となって、最新APUをサポートし(A300でサポートしていたBristol Ridge世代のAPUは非対応)、パフォーマンスアップも期待通りの仕上がりだ。最大64GBのメモリや4台のストレージを収納可能という高い拡張性をA300から継承しつつ、最新世代のRyzen PRO 4000Gシリーズに対応しながら、価格が税別1万9880円とA300登場時と変わらないのもうれしいところだ。
同時発売となる第10世代Core対応の「DeskMini H470」に対して、内蔵GPUの性能を含めて性能は期待できる。X300では、インタラクティブUEFIでAPUやGPU、そしてメモリのクロックも細かくチューニング可能で、その点でも追い込む余地があるのは魅力だ。ただし、Ryzen PRO 4000GシリーズはAPUの倍率にロックがかけられており、消費電力の面からはRyzen 7 PRO 4750Gでのオーバークロックは避けた方が無難だろう。
いずれにせよ、小型で高性能、しかも柔軟性の高いモデルとしてA300と同様、長く人気を保つ1台と言えそうだ。
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