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Friday, November 20, 2020

タブレットとしても利用可能、世界初の折りたたみ式PC「ThinkPad X1 Fold」 - PC Watch

amparipisang.blogspot.com
「ThinkPad X1 Fold」。本体色はブラックのみ

 レノボ・ジャパンから、画面を折りたためるフォルダブルPC「ThinkPad X1 Fold」が登場した。同社では「世界初の画面折りたたみ式PC」と銘打っており、13.3型のOLEDディスプレイを半分に折りたたみ、手帳のように持ち歩けることが大きな特徴だ。

 背面のキックスタンドで自立させ、付属のキーボードと組み合わせてノートPCとして使えるほか、本体上にキーボードを重ね、画面の半分だけを用いた手帳サイズのミニノートとしても利用できる。さらにタブレットライクに読書を楽しめたりと、折りたたみの機構を生かしたさまざまな使い方が可能だ。

 直販モデルはカスタマイズが可能だが、基本的にはOSとストレージ、5Gの対応の有無、さらには保証期間の違いのみで、プロセッサはCore i5-L16G7、メモリは8GBでいずれも固定、ディスプレイの仕様も共通だ。今回編集部から届いたモデルは、Windows 10 Pro 64bit、ストレージは512GB SSD、Wi-Fiのみ(5Gなし)という仕様だった。

13.3型ながら折りたたむとシステム手帳並みのコンパクトさ

 本製品は従来のノートパソコンやタブレットといった枠に収まらない新機軸の製品だが、マットブラックの筐体、さらに赤のアクセントカラーを採用し、ThinkPad Xシリーズの名を冠している。背面にもThinkPad X1シリーズのロゴがあしらわれている。

 ディスプレイは13.3型のOLED(2,048×1,536ドット)で、外見はタブレットのようだ。しかしながら、Core i5(Lakefield)、メモリ8GBを搭載し、OSにもWindows 10を採用した、純然たるWindowsパソコンだ。BTOでは5Gモデムも選択できる。

13.3型のOLEDディスプレイはフレキシブルタイプで、中央から曲げて折りたためるのが最大の特徴だ。この写真のように途中で止めた状態でのキープも可能
アスペクト比は4:3で、縦方向に長いのが特徴
背面。100%本革のレザーフォリオと一体化している
右上にはThinkPad X1シリーズのロゴがある

 筐体はカーボンファイバー製で剛性は高く、ひ弱なイメージはまったくない。背面は100%本革のレザーフォリオと一体化しており、高級感もある。この背面には最大85度まで開くキックスタンドも搭載しており、立てて利用することが可能だ。

 本体サイズは約299.4×236×11.5mm(幅×奥行き×高さ)と、フットプリントはA4サイズより一回り大きい。近い製品としては12.9インチiPad Proが挙げられるが、前述のようにカバーとキックスタンドが一体化していることもあり、厚みはややある。

 一方、折りたたんだ時のサイズは約158.2×236×27.8mmと、システム手帳並みのコンパクトさだ。折りたたんだことで軽くなるわけではもちろんないのだが、このサイズならば、パソコン用でない小さなバッグにも余裕で入る。

 重量は、本体が公称約973g(実測963g)、キーボードが178gと、PCとして見れば軽量だが、タブレットとして両手で持って使うことを考えるとややヘビー級だ。使い方によって評価は大きく変わりそうだ。同梱のキーボードとアクティブペン、およびACアダプタを持ち歩く場合は、さらにプラスアルファの重量が加算される。

 本体にはUSB Type-Cポート(USB Type-C 3.1 Gen 2対応)が2基搭載されており、付属の65Wアダプタを用いて充電が行なえる。このUSB Type-Cポートは、筐体側面の長辺側と短辺側、それぞれに1基ずつ搭載されているので、利用スタイルに合わせて都合のよい側に挿すことができる。

 カメラは前面カメラのみで、背面カメラは非搭載だ。Web会議やビデオチャットは問題なくこなせるが、タブレットのような写真撮影は不可能だ。またこのカメラは、最近のThinkPadシリーズでお馴染みの、物理的に覆う保護カバーが用意されていないので、ウェブ会議やビデオチャットのあとは、確実にカメラ機能をオフにする必要がある。

USB Type-Cポートは、長辺側と短辺側に分散して配置されているので、利用スタイルによって一方がふさがっていてももう一方を使って充電できる
カメラは前面カメラのみで、ヒンジ部のすぐ隣りにある。物理カバーは備えない

フレキシブルな有機ELパネル採用ながらほぼ完全にフラット

 折りたたみのギミック、および画面について詳しく見ていこう。

 本製品はフレキシブルなパネルを採用しており、継ぎ目がない状態で、半分に折り曲げることができる。スマホでは「Galaxy Fold」という先行事例があるが、そちらは伸ばした状態でも中央に一定のくぼみがあったのに対し、本製品のそれはほぼ完全にフラットで、使用中も気にならない。知らない人に見せたらびっくりするであろうレベルだ。

 ヒンジの部分は無段階でスムーズに開閉できる。自重だけで広がったり閉じたりすることもなく、また固すぎて開閉しにくいといったこともない。適切にチューニングされている印象だ。画面をわずかに折り曲げて本のように持つ使い方(ブック・モード)にも対応する。

 ベゼルのヒンジ部分は、シリコン製とおぼしき柔らかい素材で覆われている。実はこの柔らかい素材はヒンジ部に限らず、ベゼル全体を覆っており、外見上の一体感を醸し出している。滑り止めの効果もあるほか、手の脂がほとんどつかないのも好印象だが、素材の特性上、ホコリはやや付着しやすい。

2つ折りにしてたたむことができる。可動は極めてスムーズだ
ヒンジ部はベゼルごと軟質樹脂で覆われている。硬質な樹脂でないことは、外観からはほとんどわからない
便宜上「折りたたむ」と表現しているが、完全に「く」の字でピシッと2つ折りになるわけではなく、中央部分に約1cmほどの幅があり、そこをたわませる形で折り曲げている

 ベゼルの幅は、横14mm、縦17mmと、現行の狭額縁ノートと比べると幅がある。もっともタブレットのように手で持って使う場合、指をかけられる幅が適度にあったほうが使い勝手がよく、そうした意味では実用性に振った仕様だと言える。

ベゼル幅は横が14mm。やや広めだが、タブレットとして両手で持つならばむしろ使いやすい
縦は17mm。こちらはもう少しスリムでもよさそうだ
ランドスケープモードで持った状態。一定のベゼル幅があるので保持しやすい

 画面について特筆すべきなのは、アスペクト比が4:3と、ノートPCの多くを占めるワイド画面よりも縦方向に長いことだ。オフィスソフトを利用する場合など、天井方向に画面が広く使えるのはメリットだ。

 試用していて気になったのは、画面の光沢がきついことだ。ThinkPad Xシリーズの多くは非光沢仕様であるため、多少なりとも違和感はある。折りたたみが可能な本製品はそれだけ画面がさまざまな方向を向くため、映り込みを目にしやすいのも理由の1つだ。タッチ操作で指紋が付きやすいことと合わせて、神経質な人は気になるかもしれない。

Lakefieldゆえ? ベンチマークのスコアはやや低め

 ではベンチマークテストの結果を紹介しよう。今回利用したベンチマークソフトは、ULの「PCMark 10 v2.1.2177.0」、「3DMark Professional Edition v2.5.0.0」、Maxonの「CINEBENCH R20.060」の3つだ。比較として同じレノボの「ThinkPad X1 Carbon(2019)」、およびWindows 10タブレットである「Surface Go 2」の結果も加えてある。

ThinkPad X1 Fold ThinkPad X1 Carbon Surface Go 2 LTE Advanced
CPU Core i5-L16G7(1.4GB, 4MB) Core i7-8565U Core m3-8100Y
ビデオチップ Intel UHD Graphics Intel UHD Graphics 620 Intel UHD Graphics 615
メモリ 8GB LPDDR4X 4266MHz 16GB LPDDR3 2133MHz 8GB
ストレージ 512GB SSD(NVMe/PCIe) 256GB SSD(NVMe/PCIe) 128GB SSD
OS Windows 10 Pro 64bit Windows 10 Pro 64bit Windows 10 Pro 64bit
PCMark 10 v2.1.2177
PCMark 10 Score 1,937 3,810 2,736
Essentials 4,912 7,993 6,450
App Start-up Score 4,883 9,554 7,945
Video Conferencing Score 4,643 6,951 5,882
Web Browsing Score 5,229 7,691 5,744
Productivity 2,287 6,376 4,828
Spreadsheets Score 2,535 7,040 5,525
Writing Score 2,064 5,775 4,220
Digital Content Creation 1,757 2,947 1,786
Photo Editing Score 2,667 3,659 2,268
Rendering and Visualization Score 1,006 1,928 1,021
Video Editting Score 2,022 3,629 2,461
PCMark 10 Modern Office Battery Life 6時間16分 5時間53分 6時間28分
Performance 3515 6690 3749
CINEBENCH R20.060
CPU 669 1,380 未計測
CPU (Single Core) 204 388 未計測
3DMark Professional Edition
Night Raid 4,061 4,867 3,043
Graphics Score 5,163 4,867 3,376
CPU Score 1,839 4,873 1,952
Sky Diver 4,218 3,931 2,575
Graphics Score 4,142 3,552 2,487
Physics Score 4,329 7,891 3,344
Combined score 4,690 4,137 2,387
Time Spy 450 396 275
Graphics Score 401 344 243
CPU Score 1,522 2,935 1,154
Fire Strike 1215 1079 732
Graphics Score 1311 1138 799
Physics Score 4593 9461 3466
Combined score 459 398 261
Fire Strike Extreme 612 509 未計測
Graphics Score 626 509 未計測
Physics Score 4585 9324 未計測
Combined score 249 211 未計測
Fire Strike Ultra 325 288 未計測
Graphics Score 316 279 未計測
Physics Score 4583 9240 未計測
Combined score 151 131 未計測

 本製品に搭載されるCore i5は、低消費電力が特徴のLakefieldで、CoreとAtomを組み合わせた5コアという変則的なCPUだ。本製品のような小型PCにはもってこいだが、今回の比較対象である2019年モデルのThinkPad X1 Carbonに搭載される第8世代のCore i7と比べるとベンチマークにおいてはやや分が悪い。

 さらにメモリは8GBということで、16GBを搭載する比較対象とはどうしても差が出てしまう。本製品は直販モデルでもメモリは8GB固定で増やせないので、この点は注意すべきだろう。ただし3DMarkでは、ハードウェアの差が出やすいCPU ScoreやPhysics Scoreは別にして、全体的に善戦している。

 もう一方の比較対象であるSurface Go 2は、ラインナップの中で最上位の、Amber Lake YのCore m3搭載モデルということで、今回のベンチでも一部では本製品より上のスコアが出ている。トータルでは本製品のほうがイーブンかやや上だが、これらを見る限り、PCにカテゴライズされる製品とはいえ、ややタブレット寄りの印象を受ける。

既存のノートPCやタブレットにはないワクワク感

 さまざまな新機軸の機能を組み込んだ本製品は、キーボードやペンも同梱されたパッケージとなっており、それゆえ価格は30万円台(直販モデルで税込327,426円~)とかなりのものだ。今回の評価機のWindows 10 Pro 64bit、512GB SSDという構成だと、eクーポン適用時で税込361,680円とさらに高くなる。

 もっともこのクラスのノートパソコンで20万円台はありえる価格で、そこにタブレットとして使える付加価値をつけた製品と考えれば、そう違和感はない。ノートパソコンとタブレット、買い替えのサイクルがちょうど一致する時期ならば、じゅうぶん射程圏に入ってくる製品だろう。なにより使っていて感じるワクワク感は、既存のノートパソコンやタブレットにはないものだ。

 製品が個人向けなのか法人向けなのか、ターゲットがやや分かりにくいのも、テレワークの浸透などでワークスタイルが個人寄りになっている昨今、トレンドに合致していると言える。あらゆるシーンにフィットするオールインワンのデバイスを探している人であれば、ひときわ高い満足感を得られるであろう1台だ。

フレキシブルディスプレイでもっとも訴求力が高いのは、紙の本と同様のスタイルで楽しめる電子書籍かもしれない。こちらは追って別のレビューで詳しく紹介する

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