中央アルプスで絶滅した国の特別天然記念物ライチョウの復活に向け、環境省は2021年度、20年8月に北アルプス・乗鞍岳から中ア・木曽駒ケ岳に移送して越冬した家族の一部を動物園に移して繁殖させ、再び現地に戻す野生復帰事業を始める。動物園で飼育した個体を野生復帰させるのは初の試み。
同省によると、20年11月時点で、木曽駒ケ岳に移した母親とひなの3家族19羽の大半と、18年に現地で飛来が確認された雌1羽は健在だった。ライチョウは誕生の翌年には繁殖が可能となるので、順調なら今夏には新たな家族が形成される。
計画では、4~6月に現地で雌雄のつがいが作る縄張りや巣を調査。夏には繁殖した4家族程度をケージ(かご)に入れて1カ月ほど保護した後、うち2家族を8月に動物園に移送する。移送先は茶臼山動物園(長野市)と那須どうぶつ王国(栃木県那須町)。他の家族は現地に残す。
動物園では野生の生活サイクルに合わせて11月まで家族単位で、その後は雌雄に分けて飼育する。翌22年は野生復帰させる雌親を選んで雄とつがいにして繁殖させ、夏には新たに形成された2家族を現地に返す。それ以降も同じ取り組みを繰り返し、25年には中アのつがい数を30~50組に増やすのが目標だ。
ただ、飼育・増殖には課題が多い。
野生のひなは生後数日間、母親が盲腸で発酵・分解した「盲腸ふん」を食べて消化や免疫に関わる腸内細菌を獲得する。これで、餌となる高山植物の毒素を分解できる。母親からは特有の原虫を受け継ぐことも必要で、その原虫に耐性ができて原虫が起こす病気を抑えられるとされる。
飼育下でこれらの課題をクリアできるかどうか。他にも現地に近い環境作りや餌の工夫などが求められる。
長野市で19日開いた関係者の保護増殖検討会では「山から急に暑い下界に移すのは難易度が高い」「温度管理や初期の感染症が心配だ」といった意見が出た。中心的に携わる中村浩志・信州大名誉教授は「飼育面は今までの延長では難しい。ハードルが高い試みになる」と述べた。【武田博仁】
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