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Tuesday, May 18, 2021

移民大国ドイツで起きたヘイトクライム 警察内部で放置され続けている人種差別 - wezzy|ウェジー - wezzy

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移民大国ドイツで起きたヘイトクライム 警察内部で放置され続けている人種差別の画像1

写真:AFP/アフロ

 「移民大国」と言われるドイツ。2019年の調べによれば、人口の26%である2120万人、実に4人に1人が「移民の背景」を持つ人であるという。

 「移民の背景」を持つ人とは、自分自身、もしくは少なくとも親の一人がドイツの国籍を持たずに生まれた人を指す。例えば、新型コロナワクチン第一号を作った「バイオンテック=ファイザー」の創業者として一躍脚光を浴びたウグル・サヒン博士とエズレム・テュレチ博士もそうだ。その数は増加傾向にあり、2019年には、5歳未満の子どもたちの40.4%が「移民の背景」を持っている。

 しかし、数が増えているから差別が減っているかというと、残念ながらそんなことはない。むしろ人種差別的な暴力事件は数年前から増加傾向にあり、特にモスクを狙った事件が増えているそうだ。

 公的には、1990年の東西ドイツ統一以降、極右の暴力事件による死者は106名とされている。しかし人種差別や極右に反対し独自の調査を続けるアマデウ・アントニオ財団によれば、死者は少なくとも213人にのぼる。この数のズレは、多くの事件が、極右など「政治的な犯行動機」によるものではないとされてしまっているためだという。

ハーナウで起こった人種差別テロ事件

 昨年2月19日夜。フランクフルトにほど近いハーナウの街で、9人が射殺され、5人が怪我を負うというテロ事件が起こった。狙われたのは、シーシャ(水タバコ)を提供するバーなどで、被害者は全て「移民の背景」を持つ人たちだった。バーに隣接するキオスクのスタッフやお客も巻き込まれた。

 犯人は、犯行現場から車で5分くらいのところに住むトビアス・Rだ。犯行後、自宅へ向かい、母を撃ち殺して自殺した彼は、自分のホームページ上に、人種差別な世界観、女性全般への憎しみと、自らが子どもの時から諜報機関にスパイされているといった妄想を展開する、24ページにも及ぶ「全ドイツ国民に告ぐ」手紙を残していた。

 警察は、そこで犯行に使われた自動拳銃のほかいくつかの拳銃を発見した。全て合法に所持が許可されていたものだ。1つは購入したもの、1つは銃砲店からレンタルしたものだった。

 犯人は2012年から射撃団体に属し、銃砲所持許可を持っていた。しかし彼は、過去に何度も陰謀の妄想による訴えを出していることで知られる、警察には有名なパラノイアであったという。

 最初に警察の目に止まったのは2002年のことで、レイプ被害の訴えだった。自分は子どもの頃から壁やコンセントから盗撮・盗聴されている精神的なレイプの犠牲者だと訴えたのだ。

 これまでに警察や検察の書類に15回、うち5回はなんらかの事件の被疑者として名前が挙がっており、バイロイト大学からは、ガードマンに暴力をふるったかどで立ち入り禁止のお達しを受けている

 医師からは精神疾患があると診断され、保健所から入院措置が出された時には警察官が自宅に呼ばれる騒ぎになったほどだった。その際にはすぐ父親が弁護士を手配して、両親のもとに返された。ただし釈放時には「要治療」の注意がついた。しかし過去を問われることもなく、武器所有の免許は問題なく更新され続け、今回の事件につながったのだ。

「どうやら、私の国のある人が、あらゆる点で破壊的な民族や人種・文化を、我々の内部に引き入れることに貢献してしまったようだ」
「我々の国から、彼らを完全に追い払うことでは解決できない。ある種の民族は、存在自体がそもそも間違いで、完全に絶滅させるしかないのだ」

 そこには、北アフリカ、中近東、アラビア半島やアジアといった「完全に絶滅させるべき」国が列挙されていた。ドイツでも安心できない、と彼は書く。「ドイツの身分証明書を持つ人が純血で価値ある人とは限らない」「ドイツ国民の半分は殺すべきなのだ」。

 この事件で娘のメルセデスを失ったフィリップ・ゴマンは赤ん坊のときにハーナウに来た。「私たちはロマです。祖父はアウシュヴィッツで殺されました。でも私たちはいまドイツで安全に暮らしていると思ったのに」

警察のレイシャル・プロファイリングの問題

 「外国人」が純血ドイツ人を害している、政府に監視されているという妄想にどっぷりと浸かった犯人が銃砲所持許可を更新でき、警察に注視されていなかったことも問題があるが、そのほかの点についても不明な点が多い。

 警察に通報したにも関わらず、全く繋がらなかったという証言がいくつも出ている

 犠牲者の一人、ヴィリ=ヴィオレル・パウンは、犯人を逃すまいと車で追いかけながら通報していたところを撃たれた。「息子の死の責任は、警察にもある」とヴィリ・ヴィオレルの父は憤る。

移民大国ドイツで起きたヘイトクライム 警察内部で放置され続けている人種差別の画像2

写真:AP/アフロ

 また、2つのバーのうち1軒は非常口に鍵がかかっていた。警察は2017年11月の検査で、このことを知っていたが、大家に鍵をかけておくように指示したという。非常口から逃げることができずに2人が命を落としている。検察当局は、遺族が過失致死で告訴して初めて、重い腰を上げて調査を始めた。警察が本当に非常口に鍵をかけるように指示したのか、それはなぜなのか。理由はまだ明らかになっていない。

 2020年6月、犠牲者の親族や友人たちが独ZEIT紙のインタビューに答え、ドイツの警察のレイシャル・プロファイリング(※注:犯罪捜査において、犯人を探す際に人種差別的な要素ー「ドイツ人らしくない」見た目などーを重視すること)の問題を指摘している。

 「警察が現場に来るのが遅かったのは、私たちが互いに撃ち合ったとでも思ったからじゃないんですかね? ギャングスターみたいに」と言うのは、ピーター・ミンネマンだ。

 ミンネマンは、事件の夜、チャンピオンズリーグを観戦するために犯行現場となったバーに立ち寄っていた。彼に弾は当たらなかったが、一緒にいた友人の一人は亡くなり、重傷を負った友人もいた。慌てて警察を呼び、救急車に友人を担ぎ込む手伝いをした彼に、警察官の一人が言った。

「目撃者として、警察署に証言に来るように」

 指定の場所は3kmも離れた場所にあり、まだ犯人は逃亡中だったのに、である。

 疲れ切って判断力をなくしていた彼は、言われるままに警察署に向かって歩いて行ったが途中で足が上がらなくなり、友人に電話して、友人たちが入院している病院へと運んでもらったという。

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