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Sunday, June 27, 2021

使い捨てプラの次は何か? 「紙製パッケージ」に冷たい視線を注ぐ背景 - ITmedia

amparipisang.blogspot.com

 近年、環境問題に対する意識が高まりつつある中、使い捨てプラスチックの次に温暖化対策のターゲットとなっているのが紙製パッケージだ。

 使い捨てプラスチックのように、海洋生物を脅かす存在ではないが、実は年間約30億本もの木が紙製パッケージに使用するために伐採されているという。しかも、その数は2025年までに、2割以上も増加すると予想されている。

プラスチック製のストローが問題になっていたが……

 また、伐採されている木々の多くが、絶滅の危機にある生物が生息するような森林からであることも懸念されている。森林は一度伐採されてしまうと、再生までにとてつもなく時間がかかってしまう。仮に再生できたとしても、元の原生林と同量の二酸化炭素を吸収したり、雨水や気温を調整したりする機能を復活させることは難しいと言われている。

 そのため、環境保護団体が中心となって、原生林を救う保護活動がずいぶん前から行われてきた。それが、再び注目を浴びているのだが、なぜ今また話題になっているのだろうか。

原生林を救う活動が活発に(画像はイメージ)

 その理由はいくつかある。まず、Eコマースビジネスが急成長していることが影響している。特にコロナ禍でネット通販の利用が加速し、紙製パッケージの需要が高まっているため、気候変動や野生動物の生態系など環境に及ぼす影響が深刻になりつつあるからだ。

 それだけではない、Eコマースの市場は今後さらに拡大していくことが予測されているため、紙製パッケージの原材料がどのように調達されているのか注意深くチェックする必要が出てきているのだ。

 そこで、いま脚光を浴びているのが「Pack4Good」というプロジェクトだ。カナダを拠点に活動している非営利環境保護団体「Canopy(キャノピー)」が立ち上げたプロジェクトで、絶滅の危機にある原生林が使い捨て紙製パッケージに使用されないように、企業などに対してソリューションを提案している。

 つい最近では、仏高級ブランドのLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンが「Pack4Good」に参加することを発表して話題になったばかりだ。

 立ち上げから、わずか18カ月しか経ってないにもかかわらず、「Pack4Good」に参加するブランドは232にもなり、それら企業の収益を合わせると1320億ドルになる。かなり巨大なプロジェクトだと言える。

「Pack4Good」とは

 では、「Pack4Good」というのは、具体的にどのようなプロジェクトなのだろうか。プロジェクトの目的は、非常にシンプルだ。紙製パッケージに使用される原材料が、絶滅の危機にある原生林から調達されないようにすることだ。

 そのために、「Pack4Good」では3つのソリューションを提案している。最初に取り組むべきことは、パッケージデザインを再考することだ。原材料を最も有効的に使うためには、優れたパッケージデザインが欠かせないからだ。

 軽くて、強度があり、小さめに設計することで、劇的に原材料の使用量を抑えることができるという。さらに、何度も使えるようなパッケージであれば最高だ。パッケージデザインを見直すことは、環境にもビジネス面でもメリットが大きいため、企業にとってもやりがいのある取り組みになっている。

大手企業が次々に「Pack4Good」のプロジェクトに参加(出典:Canopy)

 次に提案しているのは、リサイクルされた原材料を使うことだ。100%リサイクルされたもので再生紙であれば、より大きな効果が期待できる。

 通常、従来の紙製品を作る過程では、森林から木を伐採し、製紙工場で化学薬品を使って加工される。再生紙を使用すれば、原料資源の節約だけでなく、加工の際に使用される水やエネルギーもセーブできる利点がある。さらに、再生紙は入手しやすいことから、企業にとっても導入するのが比較的容易であることもメリットになっている。

使い捨て紙製パッケージが問題に(画像はイメージ)

 最後に、次世代の繊維から作った紙製品を取り入れる、という選択肢も広がりつつある。次世代というのは、革新的なテクノロジーによって、これまで焼却処分したり埋め立て処理をしていたような、残留物や廃棄物から新たな紙素材を作るといった取り組みだ。

 例えば、小麦などを収穫した後に残る麦わらからも、新たな紙素材を作ることができるという。農作物を育てる過程で出る廃棄物から、そのような環境に配慮した紙素材が作り出せるとなれば、農家にとっても新しい収入源になるため期待が高まっている。

 また、農業廃棄物を使用することで、別の環境問題を解決することも期待できそうだ。インドを例に挙げると、毎年9000万トンもの稲わらが焼却処分されていて、隣接する都市の大気汚染が問題になっているという。そこで、大気汚染の元になっている稲わらを再生紙に変え、市場に流通させることができれば、双方にとってメリットがある取り組みになりそうだ。

世界最大規模の企業が加わった

 Canopyによると、次世代の代替え製品は、従来の紙製品を作る工程よりも平均して、水の使用量が90%以下で、エネルギーの使用量も70%以下に抑えることができるという。また、化学薬品の使用が少量だったり、環境に優しい化学薬品を使用していることから、環境保護に効果的だという。

 このように「Pack4Good」のプロジェクトでは、具体的なソリューションを提案しているため、関心を寄せる企業が増えている。現在「Pack4Good」に参加している企業は、ファッションブランドやパーソナルケアブランド、電気通信会社や印刷会社など多岐に渡っている。

 これらの企業は、22年末までに、パッケージを最小限にすること、絶滅の危機に瀕している原生林から調達された原材料を使用しないこと、農業廃棄物などを使用した次世代の紙素材や再生紙をなるべく使用することをコミットしている。

 小さな取り組みから始まったプロジェクトだが、世界最大規模の企業が加わったことで大きな転換期になっている。

LVMHがCanopyと提携し、森林保護への取り組みを強化(出典:Canopy)

 LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンだ。同社は、Dior(ディオール)、Givenchy(ジバンシー)、Stella McCartney(ステラ・マッカートニー)といったファッションブランドのほか、高級シャンパンのドン ペリニョンやブランデーのHennessy(ヘネシー)、高級腕時計のブルガリやタグホイヤーなど75ものブランドを傘下に置く世界最大のファッション企業だ。

 21年1月には、Tiffany(ティファニー)の買収を完了させるなど、ファッション業界に置ける影響力はただならないものがある。550億ドルのビジネス規模を持つ、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンが「Pack4Good」に参加することで、サプライチェーンを本格的に変えることができそうだ。

紙製パッケージが環境に与える影響

 一般的に、使い捨てプラスチックの代わりに、紙製パッケージを使用すれば環境問題を解決できると安易に考えがちだが、そう単純な話ではないようだ。紙製パッケージが環境に与える影響は、消費者が思っている以上に大きなものとなっている。

 森林を適切に管理することは、気候変動の解決策として重要な役割を担っているため、科学界では30年までに世界の森林の30〜50%を保存したり修復するように提唱している。その期限までには、わずか10年ほどしか残されていない。だからこそ、使い捨てされる紙製パッケージのために、樹齢400年から800年もするような原生林を伐採する必要性が問われている。

 消費者や企業の間で環境問題に関心が高まっている今、世界規模で原生林を保護する活動がスケールアップすることを期待したい。

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