Pages

Wednesday, September 1, 2021

最恐・最悪の大害虫!? でも、もしスズメバチが全ていなくなったら… - tenki.jp

amparipisang.blogspot.com
「それなら駆除業者に片っ端から駆除してもらえばいい」と思うかもしれません。しかしキイロスズメバチは他のハチの巣を丸ごと集団で襲撃するような習性はない分、敏捷な身のこなしでオオスズメバチが狩りをしない小さな虫たちを旺盛にハントしています。
キイロスズメバチが市街地に定着できるのも、市街地に多い小型の昆虫(その多くが人間にとっての衛生害虫=ハエ、カ、ゴキブリなどです)を捕食しているからで、彼らがいなくなることはそれらの害虫の増加を意味します。そうして、より多くの殺虫剤を撒くことになれば、結局ミツバチも生存できなくなるでしょう。

また、キイロスズメバチの成虫は花蜜を食料としますから、ハナバチ類とともに栽培植物や自生植物の花粉の媒介者としての役割もはたしており、彼らがいなくなることはそれだけデメリットがあります。キイロスズメバチは、ゴキブリなどの人家昆虫が人の排出する生ごみや食べ残しに群がるように、生ごみにも嗜好を示します。キイロスズメバチに営巣されるリスクを軽減させるには、私たち自身が生活をスリム化し、ゴミを減らし、周辺をゴミで汚さない、といった心がけも必要となるでしょう。

まとめますと、二ホンミツバチを保護するためにはオオスズメバチの存在が必要であり、害虫の駆除にはキイロスズメバチの存在が不可欠です。とはいえ、キイロスズメバチの繁殖を抑制するには、やはりオオスズメバチが必要となるのです。スズメバチ、ミツバチともにいてこそ、生態系は維持され、私たちの日々食べる作物も豊かな実りを見せているといえるでしょう。

しかし近年、スズメバチ、ミツバチを問わず、人間のもたらすネオニコチノイド系農薬が彼らを絶滅の危機に追いやっています。ネオニコチノイド系農薬とは、害虫駆除の目的で使用される農薬で、昆虫、小動物の神経伝達を阻害して死に至らしめる化学物質を含みます。
ヨーロッパやアメリカでは、2000年ごろからミツバチが大量死する事態が起きており、その原因と考えられるために順次使用規制が強化されてきました。また最近の研究では、ネオニコチノイドには、人間を含む脊椎動物の免疫機能や生殖機能を低下させる慢性的な毒性があることも判明してきました。

日本では欧米よりも規制が緩く、農林水産省は「欧米のようにネオニコチノイドが粉塵として舞うほどの使用はしていない」「水稲に被害をもたらすカメムシには、ネオニコチノイドの使用は不可欠」ともしてきましたが、ここ十年内の調査により、水田に使用したネオニコチノイドが、ハナバチ類の死滅にも大きく関与していること、また西洋ミツバチよりも二ホンミツバチはネオニコチノイドへの感度が高く、西洋ミツバチでは問題ない使用量でも、二ホンミツバチには深刻なダメージがあることがわかってきました。
これを受けて農林水産省でもネオニコチノイド系農薬の使用に関して規制に向けた再評価がなされつつありますが、果たしてどうなるかは今のところ不明です。

日本在来のハナバチ(ミツバチ)とスズメバチは、この昆虫の多い、それゆえに豊かな植生を誇る日本列島を支えてきた小さな英雄たちです。彼らへの感謝と共存の道をさぐることこそ、「サスティナブル(持続可能)」につながる道なのではないでしょうか。

スズメバチが危険な季節は、8月末から10月までの数か月です。それ以外の時期は、決して危険でなく、私たちが過剰反応しなければ何の害も及ぼしません。殊更に恐れたりパニックにならず、適切に距離を取って共存していくことは、人間にとっても多くの利益をもたらすでしょう。

(参考・参照)
スズメバチの真実 最強のハチとの共生をめざして  中村雅雄 八坂書房
蜜蜂被害事例調査(平成25年度~平成27年度):農林水産省

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( 最恐・最悪の大害虫!? でも、もしスズメバチが全ていなくなったら… - tenki.jp )
https://ift.tt/3mU1LAM

No comments:

Post a Comment