マウスの尻尾などから採取後、凍結乾燥し最長9カ月間保存した体細胞から、もとのマウスと遺伝的に同じであるクローンを作ることに世界で初めて成功したと、山梨大の研究チームが5日、発表した。クローンは全て正常な繁殖能力を持っており、遺伝資源の低コスト長期保存や、絶滅危惧種の「復活」に役立てられる可能性があるという。
研究チームはまず、雌雄両方のマウスから採取した体細胞を、保護成分入りの培地に入れて凍結し乾燥。真空容器で最長9カ月、マイナス30度で保存した後、常温の純水に5分程度浸してから、遺伝情報が収められた核を取り出し、核を除去した卵子に移植した。
これをマウスの卵管に移植しても理論上、クローンの作製は可能だが、チームは成功の確率を上げるため胚性幹細胞(ES細胞)の技術を用いて細胞を大量に増殖。その上で再び卵子に核移植を行い、マウスの卵管に移植することで、計75匹のクローンマウスを成長させることに成功した。最初に生まれた世界初の雌は「ドラミ」と名付けた。
生まれたマウスは全て正常な繁殖能力を持っていたが、一部は雄の細胞から作ったにもかかわらず、Y染色体が欠落し雌になっていた。若山清香・同大助教は「偶然の産物だが、雄しか生き残っていない絶滅危惧種から、雌を作り出して種を復活させる道が開けるかもしれない」と話す。
チームはこれまで、常温で1年以上保存したマウスの凍結乾燥精子を使い、子マウスを誕生させることに成功している。そのため、凍結乾燥体細胞の保存も常温で行えるようにし、遺伝資源の低コスト長期保存を実現したいとしている。
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