すごい速さで変化し様々なものが生まれては消えていく現代。モノやサービス、言葉だけでなく「動作」も変化していることに注目し、失われていく動作をまとめた『絶滅危惧動作図鑑』(祥伝社)なるものが出版されている。そこに掲載された動作は、確かに懐かしさを感じるものだが、実際に絶滅の危機に瀕しているのか。実際に、Z世代が絶滅危惧動作を知っているのか、検証してみた。
ここからは、実際に図鑑に掲載されている動作をZ世代にクイズとして見せて回答できるかを検証していく。回答者は、歌やダンスだけではなく本格派のコントや漫才までこなす6人組アイドルユニット「HIKARI SHOEMITT」の鈴嶋アンジュ(17)。藪本氏に出題と解説をお願いし、筆者(30代)が実際にその動作を行った。 <第1問 テレビを叩く> 藪本:最初は簡単なところからいきましょう。第1問の動作、お願いします。 筆者:(四角いものの側面や上面を叩くような動き) アンジュ:これはすぐわかります!映らなくなったテレビを叩いている! 藪本:正解です!アンジュさんが物心ついた時には、箱型のテレビはなかったと思うんですが、なぜわかったんですか? アンジュ:サザエさんでこんな場面を見たことがあったので、わかりました。実際には、あの四角い、四角テレビ?は、本当に小さい頃にしか見たことないです。 筆者:四角テレビ(笑)。ブラウン管のテレビですね。 <第2問 小指を立てて愛人を表現> 藪本:続いては、何かを表現している動作です。お願いします。 筆者:(小指を立てる) アンジュ:あ!女! 藪本:正解です!(笑)。どんな時にこの動作の意味を知ったんですか? アンジュ:ドラマとかで見たような覚えがあります。カッコつけてるけど、ちょっとキザでダサい人が使うイメージです。 藪本:かなりイメージもきちんと伝わっていますね。彼女や恋人の存在を大声で言うのが憚られるようなシチュエーションや、照れ隠しとして使われていたみたいです。 筆者:「私はこれ(小指を立てる動き)で会社を辞めました」というテレビCMが放送されて、その中では「愛人」という意味で使われていて、そのニュアンスも広まりましたね。昔は愛人のことを「2号さん」とか呼ぶこともありましたね。 <第3問 バックして駐車する仕草> 藪本:少し難しくなるかもしれません。続いての絶滅危惧動作、お願いします。 筆者:(椅子に腰掛けた状態で、右手は体の前で何かを掴む。左手は隣の人の肩を抱くように伸ばす動き) アンジュ:えー、なんだろう。あ!わかった!バックで駐車しているところ! 藪本:おぉ!正解です!動作というのはモノの数だけあるんですが、これは、モノが変化していくと動作が失われる一例です。かつて、車をバックさせる際は、このような動作をしていたそうです。しかし最近では、ほとんどの車にバックモニターがついたので、この動作も絶滅危惧に瀕しています。 アンジュ:確かに実際には見たことないかもしれません。バラエティ番組の「胸キュンシーン」の特集で見たので覚えています。
絶滅危惧動作とは
まずはそもそも、絶滅危惧動作とはなんなのか。同作の著者であるグラフィックデザイナーの藪本晶子氏に話を聞いた。 「藝大に通っていた時、課題として街中にいる人たちの行動をたくさんスケッチしたんです。そこから”モノの数だけ動作がある”ということが見えてきました。現代は、スマートフォンでなんでもできるようになってきたので、なくなっていったモノがありますよね。それで、失われていく動作に注目するようになりました」 テレビ本体のダイアルでチャンネルを変える動作や、黒電話で電話をかける動作など、昭和を生きた世代にとっては、どれも郷愁を誘うような動作ばかりが掲載された図鑑。しかし、現在20代である藪本氏は、この全てを体験していたわけではないそう。 「大学時代の課題として集めたのは50あまりの動作で、本を出版するにあたって100まで集めました。もちろん、私が知らないものあるので、ネイティブの方(その時代を生きた世代)に話を聞いたりして集めていきました」Z世代も意外に知っている?
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