- 2014年8月3日、テロ組織がヤジディの暮らすイラクの都市に侵攻し、集団暴行と殺戮が始まった
- 虐殺を生き延びた人の多くは国内難民となり、設備もサービスもほとんどないキャンプでの過酷な生活を強いられている
ナディア・アル・ファウール
ドバイ:8月3日、世界中のヤジディが集まって、8年前にダーイシュにより虐殺された兄弟姉妹、両親、その他の愛する人々を悼む。
2014年のこの日、ダーイシュの一群が、古くからヤジディが暮らしてきたイラクの都市シンジャールに侵攻した。テロ組織は初日だけで1,268人を殺害し、続く数週間で6,417人のヤジディが誘拐された。この内3,548人が未成年の少女を含む女性で、性的隷属や強制労働を強いられた。
ヤジディのコミュニティ全体が安全を求めてシンジャールの山中に避難し、65%以上が住む場所を失った。
「国際的基準と国連の最大の努力により行われた独立中立の調査に基づいて、ヤジディの人々に対して行われた犯罪が明らかにジェノサイドであるという明白で信憑性のある証拠が存在します」と、ダーイシュによる犯罪の責任追及を促進する国連調査団(UNITAD)のカリム・ハーン氏は、2017年国連安保理で述べた。
2014年の虐殺が始まって数か月後、シンジャールとアメリカを拠点とするヤジディの人々が、コミュニティを絶滅から守るための緊急対応ユニットとして、ヤズダ(Yazda)を立ち上げた。一部の女性が解放されたり脱走したりした後、ダーイシュがヤジディの信仰を理由に、彼女たちを意図的に狙い、性的奴隷にしていることが明らかになった。
ダーイシュがイスラムの過激化と新兵募集の目的に利用していたオンライン機関誌『ダービク』には、ヤジディを「悪魔の崇拝者」であるとして奴隷化するよう兵士たちに呼びかけるファトワが掲載されていた。
ヤズダは生き延びた人々の証言を記録しているが、それによるとダーイシュの兵士は彼女らに、ヤジディのコミュニティは「ここで行われたことの後では、決して彼女らを再び受け入れないだろう」と言ったという。
現在、3,545人のヤジディが家族のもとに戻っている。内1,205人は女性で、命の危険を冒して逃れてきた。
生き延びた人々は身体的、性的、精神的、宗教的に大きな打撃を受けており、ヤズダが証言を記録しながら、心理的・社会的支援や保護を提供している。
強制的に中絶させられた者もいれば、一方でダーイシュの兵士たちが生まれた子供を取り戻しにくると考え、流産するためにわざと自分を傷つけた女性もいた。また、再教育の過程を経て子供を産み、全力で育てることを選ぶ女性もいた。
今日、これら生存者の多くは国内難民となり、キャンプでの過酷な生活を強いられている。彼女たちの訴えでは、施設はひどい状態で、食糧や水、電気、安全な住処といった最低限のサービスさえおぼつかないという。
コミュニティの再建を促進できるような、娯楽のための場所もなく、女性と子供たちは教育を続けることもできない。
あらゆる困難に抗って、ヤジディの女性たちは自分自身のために闘い続けている。
ヤズダ内に作られたヤジディ・サバイバー・ネットワーク(YSN)は、コミュニティの女性たちが信念を訴える場を設けてきた。何かを決定する際に、女性たちの声に耳を傾けることが重要だと考えるからだ。
「私は、他の誰かに代弁してもらうのではなく、自分のために声を上げられるようになりたいと思います」と、生存者の一人でYSNのメンバーは語った。
また別の一人は、「生き延びた者として、自分に関わりのあるすべての決定に加わり、私たちに関係のあるすべてのプロジェクトにおいて、自分自身の声でありたいと思います。私たちがどんなことを経験したのか、苦しみから回復して望んでいる平和と安全を手にするために何が必要なのかを知っているのは私たちだけだからです」と話した。
もっとも、正義は生存者たちに、違った仕方でもたらされる可能性もある。
ヤジディの人々は、ダーイシュの兵士たちを法廷で裁き、人道に対する罪、つまりジェノサイドの罪で訴追するよう主張してきた。多くの請願が出され、かかる費用への資金も提供されているが、問題はこうして積みあがった案件に専従する弁護人が不足していることだ。
法的訴追以外にも、シンジャールへ安全に戻れることが、避難を始めて以来ヤジディの人々が望む正義の一つの形だ。故郷では、離れ離れになった家族と再会したり、亡くなった人々をきちんと埋葬したりすることができる。
正義のまた一つの形は、ジェノサイドの事実が世界中で認識されることだ。今までのところ、ヤジディの人々を助けようという国際社会からの動きはない。さらに驚くべきことには、イラクを除く中東諸国は公式にジェノサイドの事実を認めていない。
第7条により、法的にジェノサイドの事実が認定されているイラクにおいてさえ、その理解は不完全である。虐殺の記念行事で、YSNのメンバーであるナスリン・ハッサン・ラショ氏は次のように話した。「イラクが国として、ヤジディおよびその他の少数民族へのジェノサイドを法的に認めることをはっきりと明確に含むような形の、国家的な暫定司法行動計画を採用するよう要求します」
多くの女性の生存者は、イラクやクルド人地域で二級市民として扱われることへの不安を口にしている。ダーイシュの残虐な支配下でともに暴力の被害を受けた歴史があるにもかかわらず、民族間の和解や差別の解消への努力は、まったく見られないのだ。
個人のレベルでは、生存者は差別によって、生産性や自立、自尊心を損なわれる。さらにそれによって、心理的な回復過程や治療に遅れが生じるのだ。
虐殺を生き延びた一人で、ヤジディの女性の発展ための団体Dakの創設者であるスーザン・サファール氏は、次のように話す。「政府によるシンジャールの人々に対する疎外、不注意、怠慢によって、私たちは不幸にも自分は一級ではなく二級の市民なのだという気持ちにさせられます」
「これが、私たちがイラク政府の行動から受けている印象なのです」
UNITADのリーダー、ハーン氏は2017年の安保理への報告で、ジェノサイドが起きたことを認めた。このこと自体、正義の追求において大きな前進であった。
この前進の意義を強調して、YSNのメンバーたちは言う。「UNITADがジェノサイドを認めたことは、すべてのヤジディにとってとても重要なことです。私たちにとってこれが重要なのは、この認定がヤジディや他の少数民族への虐殺が再び起きるのを防ぐ唯一の方法だからです」
からの記事と詳細 ( ヤジディのジェノサイド記念日が、改めてダーイシュによる人道に対する罪を想起させる - ARAB NEWS )
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