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Sunday, February 26, 2023

ラッコがいなくなる!? 絶滅危惧種 国内水族館飼育数3匹に減少 ... - 東京新聞

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ラッコのメイ(右)とキラ=鳥羽水族館提供

ラッコのメイ(右)とキラ=鳥羽水族館提供

 水族館の人気者「ラッコ」は、実は絶滅危惧種。現在、国内で飼育されているのは3匹だけだ。主な生息地である米国からの輸入は、保護規制で四半世紀途絶えており、日本での繁殖も不可能な状況。生態の把握や海の環境を考える上でも貴重な存在だが、国内の水族館からラッコが姿を消す日が近づいている。 (有賀博幸)

 三重県鳥羽市の鳥羽水族館。ラッコのお食事タイムは来館者のお目当ての一つだ。飼育員が投げ、水槽のガラス面にはり付いたイカ耳を、二匹のラッコが競うように水中から跳び上がって取る。今度はもう少し高い所に。届かないとみるや、さらに深く潜って勢いよくジャンプ、見事ゲットした。飼育歴四十年の石原良浩さん(61)は「いろいろな動きをさせるのは、体に異常がないかチェックし健康管理をするため。運動にもなるし、お客さんが喜んでくれれば、一石二鳥にも三鳥にもなります」。

◆ピーク時は122匹

 同館では、全国で二番目に早い一九八三年にアラスカラッコ四匹を米国から輸入し、飼育を開始。翌年赤ちゃんが生まれ、ラッコブームに火がついた。日本動物園水族館協会(東京)によると、以後、集客の目玉として各地の施設が飼育を始め、ピークの九四年は二十八施設で百二十二匹に。その後は減少の一途をたどってきた=グラフ。

 鳥羽水族館には多い時で六匹いたが、今は同館生まれのメイ(十八歳)と、二〇二一年三月にアドベンチャーワールド(和歌山県白浜町)から来たキラ(十四歳)の雌二匹。あとは、マリンワールド海の中道(福岡市)に雄のリロ(十五歳)が一匹いるだけだ。

 ラッコの出産年齢は三〜十六歳で、メイはすでに高齢の域。キラはまだ出産可能だが、福岡のリロとは兄妹のため近親交配になり、繁殖は諦めざるを得ない。飼育下でのラッコの寿命は二十〜二十五歳とされ、三匹とも二〜六年後にはその域に入る。

◆乱獲などで禁輸

 国内のラッコの繁殖計画にも携わってきた石原さんは、危機的状況に「急な話ではなく、予想されたこと」と受け止める。主な要因は、北太平洋東部に生息域を持つ米国が、乱獲やアラスカ沖でのタンカー事故(一九八九年)による個体数の減少を理由に、九八年を最後にラッコの輸出を禁止したことにある。

 国内で増やすしか手がなく、自館や水族館同士での貸し借りで繁殖に努めた。これまで国内で扱われた三百匹余のうち約二百匹が施設で誕生。成果はあったが、「年齢や世代を重ねるにつれて交尾意欲が薄れ、繁殖への参加率が落ちてきた」という。

 一方、野生では二〇一七年ごろから北海道東部・霧多布(きりたっぷ)岬沖で、アラスカラッコより一回り大きいチシマラッコが目撃され、繁殖も確認されている。四年前から現地調査に加わる石原さんは、赤ちゃんが親からはぐれて保護が必要になった場合などに備え、関係者間で受け入れ態勢を考えておく必要性も指摘する。

 鳥羽水族館では、絶滅危惧種の草食海獣「ジュゴン」(推定三十六歳)も飼育しており、こちらは世界の二水族館で二頭のみ。飼育研究部課長の半田由佳理さん(49)は「絶滅危惧種と言っても実際に見たことがないと、その動物や生育環境への関心を持ちにくい。希少な動物を一日でも長く見てもらえるよう、大切に飼育したい」と話す。

<ラッコ> 食肉目イタチ科の海生哺乳類。チシマラッコ、アラスカラッコ、カリフォルニアラッコの3種がいる。北太平洋の北米大陸から千島列島にかけての沿岸に生息。通常1産1子。18世紀以降、良質な毛皮を目的とした乱獲で激減し、2000年に国際自然保護連合(IUCN)が絶滅危惧種に指定した。


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