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Thursday, March 14, 2024

なぜ「刑務所でバナナを出すのはNG」なのか…バナナの皮で作れてしまう「不正な嗜好品」の正体(プレジデント ... - Yahoo!ファイナンス

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■「うまい棒」が定番だった

 一方、小規模の当所では同様のものを買うにしても割高になるため、より予算が厳しいのだ。

 それゆえ、当所ではきっちり60円分のお菓子を出していた。小袋のスナック菓子と、予算合わせの「うまい棒」というのが定番スタイルだった。

 年末年始や行事のときしかレギュラーサイズのお菓子を出すことができず、彼らにとってレギュラーサイズのお菓子は憧れだった。しかし、これが大手刑務所さんだと簡単にクリアできている。

 そのため、大手刑務所から移送(転勤)されてきた受刑者は、

 「○○刑務所のほうがお菓子がよかった」

 などと平気で言うから、「腹が立つ!」「人の苦労も知らんくせに!」と暴れたい気持ちになるのだ。

■「ほかの刑務所よりおいしいです」

 なぜ、彼らの声が耳に入るのかというと、刑務所では、年に1回、嗜好調査として給食アンケートを実施しているからだ。

 回収したアンケートには、「まずい」だの「○○刑務所のほうがよかった」だの、ここぞとばかりに苦情を言いたい放題のものもあれば、「ほかの刑務所よりもおいしいです」といったものもあるし、感謝の言葉で埋められたものもある。

 アンケートは無記名だが、工場名と称呼番号から個人が特定できてしまう。とくに印象深かった回答がある。「早いものでこのアンケートに答えるようになって4年目になります。思えば……」と切々と綴(つづ)られた、私に対する手紙のようなスタイルになっていた。後日、彼は「先生、僕のラブレター、読んでくれました?」なんて言ってくる。可愛い奴だ。

 このアンケート結果は、年末年始の献立やお菓子の選定の参考にしている。そのため、ぜひ自分たちの意見を採用してもらおうと、かなり真剣に書き込む人も多い。

 個人がそれぞれ別のお菓子をリクエストしてしまうと票が割れてしまい、結果的に採用される可能性が低くなってしまう。そのため、炊事工場、洗濯工場など、同じ刑務作業に従事している仲間同士で一致団結して同じ菓子名を書き、組織票を稼ぐ作戦に持ち込む。

 アンケート回収までの2日間に、どうしたら栄養士にうまくアピールできるのか、どうしたらリクエストのお菓子が採用される確率が高くなるのか、大の男たちが真剣に相談している姿を思い浮かべるだけでおもしろい。

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黒栁 桂子(くろやなぎ・けいこ)
管理栄養士
愛知県生まれ。管理栄養士、法務技官。老人施設や病院勤務を経て、病気の予防に興味をもつ。出産育児を機に料理教室や講演等の食育活動をスタート。10年間開催した「男の料理教室」ではのべ1000人の高齢男性に指導。初心者男性が料理を覚えて家族に喜ばれることにやりがいを感じる。刑務所の管理栄養士採用試験では30倍の狭き門を突破し、採用される。刑務所では制限が多いながらも「ワクワクする給食」をめざし、受刑者たちの「ウマかったっス」を聞くため、彼らとともに日々研究を重ねている。著書に『めざせ! ムショラン三ツ星 刑務所栄養士、今日も受刑者とクサくないメシ作ります』(朝日新聞出版)。
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