松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第123回
2020年11月26日 09時00分更新
アップルのM1搭載版13インチMacBook Proは、Thunderbolt/USB 4を2ポート搭載して登場しました。つまりは、TDP15W、13インチMacBook Pro下位モデルのリプレイスと位置づけることができます。
しかしM1版は、MacBook Air同様、数十%の性能向上ではなく、パフォーマンスはCPU2.8倍、グラフィックス5倍。外部GPUには対応しないようですが、どうやらシステムとしては認識している模様。13インチモデルのキャラクターを考えると、存分にパフォーマンスを向上させた存在と見ることができます。
ちなみに、13インチMacBook Pro下位モデルのリプレイスであることを、あらためて確認しておきます。
MacBook Proには13インチモデルにも、Intelチップ時代からTDP 15Wと28Wが存在し、16インチモデルは45Wを採用しています。ちなみに同じくM1チップに置き換えられるMacBook Airは、TDP 10Wでの設計となっています。これらの違いは、プロセッサの性能と熱設計が関係しているからです。
一般的に、熱設計に余裕があるほど、プロセッサに負荷をかけても熱を逃すことで処理性能を高めることができます。実際、A14 Bionicと、その派生と考えられるM1チップを比べると、前者が3.0GHz前後で動作しているのに対し、後者は3.2GHzで、より高速に動作していることが分かります。iPhoneやiPadのA14 Bionicよりも、コア数だけでなく、使う電力からして、M1の方が高速となります。
さらに、M1を搭載するボディによっても変わってきます。ちょうど冬のシーズンに入ったので少しわかりにくい部分もありますが、ボディの排熱機構の違いも性能の違いにあらわれます。MacBook Airはファンレス設計、MacBook Proにはアクティブクーリングシステムが搭載されたファンがある設計で、後者の方がより高い負荷をかけた状態を維持できます。
今までは、想定される熱設計をねらったIntelチップを、各マシンが選択する形で実装してきました。しかしアップルはM1チップに対し、GPUのコア数、内蔵統合メモリの容量以外の差をつけませんでした。これは、iPhoneが各モデルで同じAシリーズチップを搭載しているのと同じような思想です。
しかし、同じM1チップでもボディの熱設計の違いで、最大パフォーマンスに差がついています。Intelチップは世代、コア数、クロック数の違いに気づかわなければなりませんでしたが、M1は同じチップで、実装するボディで性能が変わるだけになり、Mac選びが極めてシンプルになったのです。
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科学&テクノロジー
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