62もの区市町村がある東京。担当記者が「編集長」になって一つの街を掘り下げる。
時代のキーワード、SDGs(持続可能な開発目標)。衣料廃棄問題などを抱えるファッション業界でも重視する風潮が広がっている。でも、小難しく考えないで! ファッションの街・渋谷では、各店舗がおしゃれでときめく「渋谷流SDGs」を発信している。
◆大学生がプロデュース
若者に人気の「SHIBUYA109渋谷店」。一昨年、十五〜二十四歳を対象に、SDGsに対する意識を調査したところ、「関心はあるが特に具体的に取り組んでいることはない」という回答が約40%を占めた。
そこで、109などが立ち上げたのが大学生グループ「SHIBUYA109 lab.EYEZ」。おしゃれと社会的課題に関心がある人が集まり、勉強会や、SNSなどで情報発信をしている。
昨年十二月には、ピンク色に彩られた期間限定のショップが登場。通学でも買い物でも活躍しそうなトートバッグを企画・販売した。さらりとした質感の生地に、薄緑色の糸で流行のキルティング加工に仕上げている。実は、全世界で年間約十億トンも廃棄されているバナナの茎から作られた繊維「バナナクロス」が使われている。
メンバーの一人、桜美林大三年の高橋志穂さん(21)は「若い人が商品を買うのは、かわいいとかトキメキを抱いた時。後からSDGsだったと気づけばいいなと思った」と振り返った。
◆廃材が大変身
一方、ちょっと大人な雰囲気の「渋谷スクランブルスクエア」。雑貨や食品などのセレクトショップ「ハイショップ」には、アルミの雨どいやお風呂のタイルなどの廃材で作ったイヤリング、ジュースのパックを再利用したかばんなど個性豊かな商品約四百点がずらり。デザイン性と、社会的課題の解決につながるかどうかを確認して仕入れている。ブランドマネジャーの和田奈央さん(39)は「すてきなモノは思わず手に取りたくなる。そこから商品が生まれた背景を知れば長く使いたいと思うようになる」と指摘する。
◆洗って長く使う
「渋谷パルコ」は、洗ったり修理したりして長く使うことを提案する「サステナブルゾーン」を常設する。
水洗いクリーニング専門店「リクエアンドスニーカーズ」は海洋汚染につながらないような洗剤で一つ一つ靴や衣類を水洗いし、客の好みに合わせ修繕も行う。店長の岡本宗也さん(26)は「靴洗いを文化にしたい。ソールの継ぎ足しや補色など長持ちさせる方法はいくらでもあるので、捨てるという選択肢をなくして」と呼び掛ける。オンラインでの相談も受け付けている。
おしゃれのように、SDGsの方法も三者三様。あなたも渋谷に出かけて自分なりのSDGsを見つけてみては?
◆渋谷区
人口約23万人(昨年12月1日現在)、総面積約15平方キロメートル。一度に3000人が渡るスクランブル交差点周辺は、ファッションと文化の最先端スポット。地元は静かにしてほしいと願うが、毎年何かと注目を集めてしまう「渋谷のハロウィーン」は、最近いろんな人気漫画の題材にされがち。
★公園通りの「えほんだな」=写真=は毎年この場所で開催される「国際ガーデニングコンテスト」の実行委員長賞を受賞した作品。西武渋谷店モヴィーダ館の前にあり、訪れた人を楽しませている。
★パルコ裏から井の頭通りへと下るスペイン坂。区のHPによると、喫茶「阿羅比花(あらびか)」の店主、内田裕夫氏が写真で見たスペインの風景に心ひかれ内装をスペイン風に統一。後にパルコから依頼され、迷わず命名したという。
◆編集後記
中高時代、渋谷に通っていた。ショーウインドーに飾られたカワイイ服や雑貨の数々。見ているだけで楽しくなるのは十年以上たった今も変わらない。再開発が進む渋谷は、幅広い年代の人が楽しめる店舗が増え、若者だけの街でなくなりつつある。おしゃれを求める気持ちに、性別や年齢は関係ない。いろんな人が訪れる渋谷だからこそ、SDGsを発信するのに最適な場所なのかもしれない。
明日は奥多摩町に行きます!
文・山下葉月/写真・山下葉月、池田まみ
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