藤家秀一
愛媛県内で絶滅のおそれがある川の生き物を守ろうと、県は条例に基づいて魚と貝類計3種を一体にした保護管理事業をスタートさせた。実施期間は2033年3月末までの約11年間。保護の対象となる生き物たちは川の生態系の中で密接にかかわりあっていることから、同時に保護する必要があると判断した。
県の保護管理事業の対象となる生き物は、体長約10センチの淡水魚ヤリタナゴと、淡水性二枚貝のマツカサガイ(殻長6~8センチ)とイシガイ(殻長6センチ)。
3種は松山平野南部、松前町の限られた河川に生息しており、いずれも県の特定希少野生動植物に指定されている。マツカサガイについては20年に、西条市の圃場(ほじょう)整備予定地の農業用水路でも新たな生息地が見つかった。
マツカサガイなどの生息状況を調査研究している愛媛大大学院理工学研究科の畑啓生准教授(生態学)によると、ヤリタナゴはマツカサガイやイシガイの中に卵を産み付ける性質があるため、貝がいなくなると生きていけない。またこれらの貝は小さな幼生がハゼ類のえらやひれにくっついて上流に移動する性質があるため、川に堰堤(えんてい)が整備されるにつれてハゼ類と一緒に移動できなくなっている可能性が高いという。
畑准教授らの調査によると、3種が生息する川ではマツカサガイやイシガイが絶滅寸前の状況となっている。ヤリタナゴにとっては少ない貝に産卵が集中したため、同じく二枚貝に産卵する近縁種のアブラボテとの間で交雑が起きているという。
深刻な事態をうけて、今回の保護管理事業では二つの計画が柱になる。一つは、ヤリタナゴがいる川に、西条市の生息地にあるマツカサガイを移植して以前の環境を復活させること。もう一つは、西条市のマツカサガイの生息地に圃場整備後も生息できるような水路を確保することだ。
県や農林水産省中国四国農政局などとともに保護管理事業に取り組む畑准教授は、「ヤリタナゴを守るためには川にいる貝の個体群の復活が必須なので、早急に手を打ちたい。西条のマツカサガイの生息地も、他の地域での知見を生かして残したい」と話している。(藤家秀一)
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