食虫植物「ムジナモ」が国内で唯一自生する羽生市で、官民挙げた保存活動が実を結びつつある。絶滅の危機から救おうと、地元の保存会や埼玉大の研究グループなどが協力して生育環境を整え、昨年には100万株近くに増殖した。市は20日から計6回、見学会を開いて「ムジナモの里」のPRに力を入れる。
◆「絶滅させぬ」一心
ムジナモは1890年(明治23年)に植物学者の牧野富太郎氏が江戸川河畔で発見した。形がムジナ(アナグマ)の尾に似ていることから、この名が付けられた。羽生市では、1921年(大正10年)に速水義憲氏が平島耕地で発見した。
かつては各地に点在していたが、経済成長に伴う水質汚染などの影響で自生地が激減。同市三田ヶ谷の宝蔵寺沼が唯一の自生地として、66年に国の天然記念物に指定された。
ところが同年の台風により、沼からムジナモが流出。市は68年に自生地一帯の約3ヘクタールを公有地とするなど、環境保護に乗り出した。
市民を中心に「羽生市ムジナモ保存会」(野中孝一会長)が発足したのは83年。会員の自宅でムジナモを栽培したり、観察会を開いたりして交流している。
自生地一帯は利根川流域にあたる低湿地帯で、これまでも大雨で冠水するとムジナモが流出することは頻繁にあった。前会長の尾花幸男さん(80)は「絶滅させてはいけない一心で、流出したムジナモを1株ずつ救い出して自生地に戻した」と振り返る。
ムジナモは栽培の難しい植物とされ、個体が数日で消滅することもある。保存会の地道な活動にもかかわらず、年間を通じて生育させることは難しかった。
◆97万株に急増
転機が訪れたのは2009年。市教委による緊急調査を巡り、埼玉大の金子康子教授(植物細胞生物学)を中心とする専門家らが保存活動に加わった。
金子教授らは自生地の水質や土壌などを分析。ムジナモを捕食するウシガエルの幼生やアメリカザリガニなどを駆除するとともに、ムジナモの生育に適した浅瀬の造成や、他の水生植物との共生などを試みた。
10年頃からムジナモが年間を通じて生育できるようになり、13年に約1000株だったのが16年は約15万株、市内でムジナモが発見されてから100周年の昨年は約97万株に急増した。
金子教授はムジナモの保存活動について、「結果的に自然環境の改善、生物多様性の復元にも結び付いた」と指摘。自生地一帯の動植物の種類も増えたという。
市が主催する見学会は20日から8月17日までの計6回。参加無料で申し込み不要。開催日の午前11時に三田ヶ谷農村センターに集合する。問い合わせは市教育委員会生涯学習課(048・561・1121)へ。
■ムジナモ=モウセンゴケ科に属する水生の食虫植物で、全長5~25センチ。水面下で浮遊し、放射状に伸びた葉の先端でミジンコなどのプランクトンを捕らえて養分を吸収する。環境省のレッドデータブックで絶滅危惧種に指定されている。
からの記事と詳細 ( 羽生のムジナモ守る 官民で活動実を結ぶ - 読売新聞オンライン )
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