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Wednesday, January 4, 2023

絶滅危惧種の再生加速 エチゼンダイモンジソウ :日刊県民福井Web - 中日新聞

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坂井高校 種子から株 増殖態勢へ 

「大」の文字に見える花を咲かせるエチゼンダイモンジソウ=坂井市丸岡町の丈競山で(竹田文化共栄会提供)

「大」の文字に見える花を咲かせるエチゼンダイモンジソウ=坂井市丸岡町の丈競山で(竹田文化共栄会提供)

 環境省のレッドリストで「絶滅危惧2(ローマ数字の2)類」に指定され、福井、石川両県境にのみ自生する山野草「エチゼンダイモンジソウ」について、坂井高校が再生への動きを加速させている。生徒間で研究を引き継いできて八年。発芽の必要条件が確かめられ、校内に人工気象室も導入した。二〇二三年度は種子から株への増殖態勢の確立を目指す。担当教諭は「ようやく種の保存に向けた流れが見えてきた」と話す。    (山本洋児)
エチゼンダイモンジソウの栽培に使われている人工気象室

エチゼンダイモンジソウの栽培に使われている人工気象室

人工気象室で、試験管を使って培養されているエチゼンダイモンジソウの種子 =いずれも坂井市の坂井高校で

人工気象室で、試験管を使って培養されているエチゼンダイモンジソウの種子 =いずれも坂井市の坂井高校で

 同校三階の一室に二二年四月、無菌の人工気象室が整備された。二一年十二月に申請した国の補助事業に採択されたのがきっかけ。校内にある三十年前の無菌室は蛍光灯を使用しているが、新たな設備では植物専用の発光ダイオード(LED)を採用。効果的に光を当てられる。

 温度条件をデジタルで管理できるほか、カメラやセンサーを完備し、遠隔地から観察することも可能になった。充実した環境下で、試験管内の培地に種をまいて発芽させる。

 同校の研究開始は、一五(平成二十七)年度にさかのぼる。福井大の研究者から、絶滅危惧種の保全に向けて増殖に挑戦しないかと誘いがあった。一六年度から数人の三年生が取り組みを始めた。

 簡単ではなかった。福井大から提供された種を培養土にまいても全く発芽しなかった。ここ数年の研究で、発芽には採種から二週間以内の種まきが必要と確認。弱い光の条件下でのみ生育し、鉢の底部に水を張る「腰水」でも枯死せず、栽培可能と突き止めた。

 二一年夏には、発芽の様子を動画に収めることに成功した。蓮浦義之教諭(46)は「恐らく世界初」と話す。同年秋に校内で生育させた十株ほどを、坂井市丸岡町竹田地区にある自生地の丈競(たけくらべ)山(一、〇四五メートル)に初めて定植した。

 二二年度は、竹田地区から千〜二千個という大量の種子の提供を受けたが、採種から二週間以上が経過していたため、うまく発芽しなかった。しかし、丈競山への定植は続けようと、以前から育てていた数株を十一月に斜面に植えた。

 二三年七月には採取して間もない種子が竹田地区の関係者から手に入る予定。人工気象室で試験管千本の培養を目標に掲げる。研究に携わる食農科学科農業コース三年の佐孝太翼(だいすけ)さん(18)は「二三年度は発芽率を増やし、丈競山の育ちやすい場所を見つけて定植してほしい」と後輩に思いを託す。

 エチゼンダイモンジソウ ユキノシタ科ユキノシタ属ダイモンジソウの一種。1969年に発見、73年に命名された。花弁が5枚あり、うち2枚が長いことで「大」の字のように見える。開花時期は5〜6月。福井、石川両県境に広がる丈競山(坂井市丸岡町)の谷沿いのうち、日当たりが悪く、湿った岩の斜面に生育している。20年ほど前の山野草ブームで乱獲され、絶滅の危機にひんしている。県の分類では絶滅危惧1(ローマ数字の1)類。

地元民 保全協力惜しまず 丸岡「竹田文化共栄会」


エチゼンダイモンジソウの自生地を確認する大川代表理事=坂井市丸岡町の丈競山で(竹田文化共栄会提供)

エチゼンダイモンジソウの自生地を確認する大川代表理事=坂井市丸岡町の丈競山で(竹田文化共栄会提供)


 坂井高校によるエチゼンダイモンジソウの保全に向けた動きには、自生地の坂井市丸岡町竹田地区の存在が欠かせない。種子の採取・提供、株の定植に協力を惜しまず、思いは共通している。「絶滅危惧種の指定が解除されるくらい増やしたい」

 協力しているのは地区の全住民が参画する一般社団法人「竹田文化共栄会」。地区では昭和五十年代、エチゼンダイモンジソウの発見を旧竹田公民館(現竹田コミュニティセンター)が発行している広報誌「じょんころ」に掲載した。固有種をアピールしてきたが、保全に向けた大きな動きはなかった。

 二〇一八(平成三十)年ごろ、ふるさと納税の事業として、竹田小学校の学校林整備が企画された。エチゼンダイモンジソウの保全も目的の一つに。これを機に、同会の大川貞幸代表理事らが、自生地の丈競山で種子の採取に取り組むようになった。ここ二年は福井大からバトンを受け取った坂井高に種子を提供してきた。大川代表理事は「発芽させるのは難しく、自分たちだけでは無理。科学的な技術を持つ若い力は本当にありがたい」と語り、引き続き連携を深めたいとしている。

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