栃木県の特産品として知られるイチゴの「とちおとめ」。イチゴ生産トップの真岡市で、国産バナナ「とちおとこ」の生産に取り組む。10月も都道府県魅力度ランキングを発表したテレビ番組で取り上げられたり、市内のイベントに出店したりして、地元のPRに一役買っている。
真岡市内にある計16アールの温室のハウス内では、青々としたバナナの房が上向きに実り、出荷の時を待っていた。「サンジャクという品種の系統のバナナ。とても甘いです」。大きな葉と房は一瞬、ここが北関東ということを忘れさせるほどだ。
本業は印刷会社の会社員。それまで縁のなかった農業を志したのは、コロナ禍がきっかけのひとつだったという。「いろいろなものの需要が変化するなか、変わらないものは何か」。ITの仕事などをしている学生時代のアルバイト仲間と話すうちに「我々のITのスキルを生かすには農業がいい」と考えた。
真岡市でまず思い浮かぶのはイチゴだが、「すでに有名で経験がある方々がいる。今からでは追いつけない」。日本人の需要が多く、国内で栽培している人が少ないバナナに目を付けた。
高齢で休耕した人からナス栽培用のハウスを借り、愛知県の生産者から分けてもらった高さ数十センチの50株を植えて、2021年4月に栽培がスタートした。順調に育って高さ3~4メートルに。だが、花を咲かせる前に枯れ始めた。ハウス内の加温が足りず、ほぼ全滅に近い状態だった。
翌年は温度管理に気を配った。メンバー全員が兼業。毎日ハウスに行くことができなくても、1分単位で温度のデータが遠隔でも分かる仕組みを構築した。スマートフォンの操作で水やりもできるようにした。
ハウスの暖房代はクラウドファンディングで集めた。昨年秋には待望の花が咲いた。それが実って、今年4月から出荷がスタート。市のふるさと納税の返礼品にも選ばれた。
商標登録した「とちおとこ」を考案したのは妻。ラベルには「栃木のおとめに恋した」とうたう。認知度の高いイチゴのとちおとめに近づけ、男性の仲間たちでつくっている「熱血バナナ」のような意味も込めた。
無農薬、防かび剤不使用。一般的な輸入のバナナに比べると高価だが、一度食べた客からは「香りがよく味が濃厚。昔の高級品のバナナのよう」と好評だ。リピーターになった人もいて、北海道から福岡県まで注文があったという。
今後は栽培面積の拡大をめざす。今月からは新商品のバナナミルクの素(もと)の販売も始めた。根底にあるのは地元・真岡への思いだ。「(観光客は)高速道路の真岡インターで降りても、市内をスルーして(陶芸で有名な)益子町に行く。僕らの農園が、真岡にも足を運んでいただける小さな理由になったらうれしい」(津布楽洋一)
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