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Tuesday, June 2, 2020

絶滅危惧種の生息地で工事、OK? ベッコウトンボ舞う北九州の湿地 - 西日本新聞

 絶滅危惧種のベッコウトンボが生息する北九州市の港湾で埋め立て工事が進められている。「これって違法じゃないの?」。「あなたの特命取材班」に、こんな声が届いた。日本トンボ学会が生息を確認し、会員が生息地の保護を北九州市に求めているが、工事は止まらない。一体どうしてだろうか?

 環境省によると、ベッコウトンボは体長約38ミリで4枚の羽に褐色斑があるのが特徴。ごく近い将来に野生での絶滅の危険性が極めて高いIA類に指定され、国内では福岡、大分、熊本、鹿児島など6県のみに分布し、個体数は不明という。

 投稿者の男性は2015年春ごろ、門司区の新門司港の埋め立て地にできた湿地でトンボを発見。同学会に連絡し、学会側がベッコウトンボと確認した。

 同学会の男性会員は17年、市環境監視課に報告し、生息域の保護を求めた。同課の担当者は埋め立て工事を行う市港湾空港局に情報を伝え、水辺に配慮するよう働きかけたが、計画変更はないまま工事が続く。

 市の環境部局も配慮を求めているのに、工事を続行しても問題はないのか。環境省に尋ねると、「違法性はない」と答えた。

 種の保存法は、絶滅危惧種のうち「国内希少野生動植物種」の捕獲や採取、売買を禁止し、ベッコウトンボもこれに該当する。

 生息地は同省が「生息地保護区」に指定すれば開発が規制されるが、高いハードルがある。絶滅危惧種が約3700種指定されているのに対し、保護区は全国に7種9カ所のみ。うち一つは鹿児島県薩摩川内市の藺牟田池で、ベッコウトンボの保護区だ。

 公益財団法人「日本自然保護協会」(東京都)によると、種の保存法には国土の保全や公益との調整に留意した上で希少種を保護するとの規定があり、開発が優先されることが少なくないという。

 現地では1980年に工事が始まり、未造成部分の一部は湿地になっていたが、近年、フェリーの岸壁や造成地の整備に伴い、湿地が土砂で埋め立てられている。工事は止まらないが、保全に向けた動きもある。

 市環境監視課は昨年、同学会と若松区の自然学習拠点「響灘ビオトープ」でベッコウトンボの卵を人工的にふ化させる実験を行い、成功。5月に同所の湿地に移植させるため、環境省からベッコウトンボの捕獲の同意を得た。

 ビオトープには元々ベッコウトンボが生息し、千匹を超えていた時期があったが、現在では50匹程度となっている。大阪府立大の石井実名誉教授(保全生態学)は「移植の成否はやってみないと分からない。一度に進めるのではなく、埋め立て地の生息域も一部残しつつ、移植先に確実に定着できるか経過を観察する、息の長い取り組みが必要ではないか」と話している。

(岩佐遼介)

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