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Thursday, August 12, 2021

人気者ラッコ、いまや国内わずか4頭…高齢で繁殖絶望的・絶滅危惧で輸入規制 - 読売新聞

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 小さな両手を使って貝を割る愛らしいしぐさで人気のラッコが、国内の水族館から姿を消しつつある。現在、国内で飼育されているのは4頭だけ。いずれも高齢のため、繁殖はほぼ不可能な状況だ。さらに輸入元の米国などでは、絶滅の危険があるとして捕獲を規制し、新たな入手も見込めない。関係者は危機感を募らせるが有効な手立てはなく、ラッコが見られなくなる日が迫っている。(大背戸将)

 「恐れていたことが現実になってしまった」。神戸市立須磨海浜水族園(須磨区)の展示担当者は、そう肩を落とした。

 今年5月、長年にわたり同園の人気者だったラッコ「ラッキー」(雄、22歳)が死んだ。同園の建て替えに伴い、ラッキーは明日花(雌、22歳)と一緒に4月、鴨川シーワールド(千葉県鴨川市)に移送されていた。死因は老衰とみられ、これでつがいで暮らすラッコが国内の施設でいなくなった。

 ラッキーは人間の100歳に相当。明日花もほぼ同年齢で繁殖はほとんど期待されていなかったが、ラッキーの死で新たな繁殖の可能性はなくなった。

 現在、国内で飼育されているラッコは、明日花のほか、鳥羽水族館(三重県鳥羽市)に2頭(雌17歳、雌13歳)、マリンワールド海の中道(福岡市)に1頭(雄14歳)の計4頭だけだ。

 須磨海浜水族園には「ラッコ館」があり、1987年以降、計22頭を飼育してきた。再オープンは2024年だが、明日花が戻ってくるかは決まっておらず、同園は「ラッコがいなくなったとしても、子どもたちに生態を学んでもらう取り組みは続けたい」とする。

 ラッコは、イタチ科ラッコ属の哺乳類で北太平洋沿岸が主な生息地。国内の施設では1982年から飼育が始まり、鳥羽水族館が84年に国内の水族館で初めて赤ちゃんを誕生させたのを機に「ラッコブーム」が起こった。日本動物園水族館協会によると、ピーク時の94年には28施設で122頭が飼育されていた。

 しかし、世代が進むにつれて、交尾しなかったり、母乳が出なかったりする問題が相次いだ。その原因について、国内の繁殖計画を統括する鳥羽水族館の石原良浩さん(60)は「飼育下しか知らない『温室育ち』のラッコばかりになり、子孫を残さなければならないという危機感が薄れたのだろう」と話す。

 飼育数の減少は、輸入が途絶えていることも原因だ。

 ラッコは毛皮を目的とした乱獲や、米アラスカ沖で89年に起きたタンカーの原油流出事故の影響で生息数が激減した。米国では国内法で野生のラッコの捕獲や輸出は原則禁止され、2000年には国際自然保護連合(IUCN)が絶滅危惧種に指定。日本には03年にロシアから輸入されたのを最後に途絶えている。

 石原さんは「残された4頭をどう長生きさせるかに力を注ぐしかない」と話している。

 北海道東部の きり多布たっぷ 岬(浜中町)沿岸では近年、ラッコの親子がたわむれる様子が目撃されている。

 調査保護活動に取り組むNPO「エトピリカ基金」(同)によると、2016年頃に北方領土から流れ着いたとみられ、5、6頭が生息。チシマラッコと呼ばれる亜種という。

 「天然ラッコを陸から観察できる唯一の地域」としてSNSで拡散され、浜中町は観光資源として期待を寄せる。しかし、ラッコはストレスに弱く、観光客がドローンを飛ばして驚かすなどマナー違反も目立つという。町は今年2月に観賞時の手引を作成し、「静かに見守って」と呼びかけている。

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