米ハーバード大学の遺伝学者ジョージ・チャーチ氏と起業家のベン・ラム氏は9月13日、「コロッサル」というスタートアップ企業を立ち上げ、絶滅したマンモスに似たゾウを遺伝子工学で誕生させるという計画を発表した。ケナガマンモス(Mammuthus primigenius)のDNAを使って、北極圏の気候に適応したアジアゾウ(Elephas maximus)とのハイブリッドを作るという。
後で述べるように、一部の科学者は、ハイブリッドゾウが北極圏にある永久凍土の融解を遅らせ、気候変動の影響を抑えられると考えている。長期的には、ハイブリッドゾウの導入により、現在はコケで覆われたツンドラを、約250万年前から1万1700年前まで続いた更新世の頃のように草が青々と茂った草原地帯に戻すことが目標だ。同時にコロッサルは、従来型の保護措置を補う技術など、高い収益が見込める新たなバイオテクノロジーの開発を目指す。
「絶滅危惧種であるアジアゾウと完全に交配できる、寒さに強いゾウを作ることが狙いです。マンモスそのものではなく、遺伝子を脱絶滅(de-extinction)させるのです」と、チャーチ氏は話す。
バイオテクノロジーを使って絶滅危惧種を保護し、さらに絶滅した種さえも復活させようという取り組みは、今に始まったことではない。2009年に研究者たちは、2000年に絶滅したピレネーアイベックスのクローンの作成に成功した。ただし、クローンはわずか数分間しか生きられなかった。(参考記事:「絶滅した動物種で初のクローン作成」)
今年4月、カリフォルニア州を拠点とする非営利団体「リバイブ・アンド・リストア」とサンディエゴ動物園は、飼育下にある絶滅危惧種クロアシイタチの遺伝的多様性を取り戻すため、クローンを作成したと発表した。(参考記事:「絶滅危惧種クロアシイタチのクローン誕生、保護に光」)
そしてチャーチ氏によるマンモス「復活」計画も、以前から世界中の注目を集めていた。しかし、近い将来ハイブリッドゾウの誕生が期待できるかというと、そういうわけにもいかない。
コロッサルの計画は、ゾウにおいてまだ実証されていないいくつかの技術に頼っているためだ。同社の最も野心的な予定表でも、最初のハイブリッドゾウが生まれるのは6年後になるだろうと、チャーチ氏は言う。そのゾウが自力で繁殖して群れを作るようになるまでには、さらに数十年かかる見込みだ。
それでも、現時点においてさえ、コロッサルのやろうとしていることは重大な疑問を突き付ける。種の絶滅とはどういう意味なのか。現在危機的状況にある種の絶滅問題に対して、バイオテクノロジーは何ができるのか。そして何をすべきなのか。
コロッサルの登場で、それはもはや抽象的な話題ではなくなったと、大英自然史博物館の生物学者でマンモスを専門とするトリ・ヘリッジ氏は話す。「真っ先に抱いたのは、本当に現実のものになろうとしているのだ、という思いでした」
からの記事と詳細 ( マンモスとゾウのハイブリッド作成計画、米で始動、気候変動対策 - ナショナル ジオグラフィック日本版 )
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