最新の報告書によると、気候変動は想定より低い気温上昇でも、想定以上に深刻な影響を与えるようだ。国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が、気候変動の影響などについてまとめた、3675ページに及ぶ報告書「Climate Change 2022: Impacts, Adaptation and Vulnerability(気候変動2022:影響、適応、脆弱性)」が、195カ国の政府によって受諾され、2月28日に公開された。(参考記事:「2021年8月に第1作業部会が報告した自然科学的根拠」)
報告書が挙げる影響は、たとえば、干ばつや熱波が樹木やサンゴを死滅させる、海面上昇が脆弱な地域の住民を移住させる、極端な気象現象が武力紛争を引き起こす可能性を高めるかもしれない、といったものだ。さらに、温暖化に歯止めをかけられないまま気温上昇が続けば、陸上にすむ生物種の半分は絶滅の危機にさらされ、一部地域の栄養不良が広範囲に拡大し、異常気象が当たり前になるだろうと警告する。(参考記事:「「温暖化で移住」が世界で始まった、気候オアシス求め高緯度へ」)
最も大きな影響を被るのは、貧困者、子どもと高齢者、少数民族や先住民だ。現在、気候変動の影響を抑える対策は取られているものの、根本的な対策は、温室効果ガスの排出をできるだけ早急に削減することだけだ。
気候変動対策に資金を拠出する米ベゾス地球基金のケリー・レビン氏は、これらの結論に関して次のように述べている。「軌道修正の緊急性がどれだけ高いかということを明確に示しています。対策が遅れれば壊滅的な結果を招き、この世界はもう二度と元には戻れなくなるでしょう」
「特にショックだったのは」
これまでのところ、温室効果ガスの排出により、世界の平均気温は1.1℃弱上昇している。今回の報告書について35ページにわたる「政策決定者向け要約」を共同執筆した英プリマス大学海洋研究所のカミーユ・パーメザン氏は、次のように話す。「この報告書の結論で特にショックだったことは、(この程度の気温上昇による)気候変動の悪影響が、予想よりもはるかに広範囲にわたり、はるかに深刻であるということです」
1.1℃弱という比較的わずかな温暖化でも、すでに永久凍土は融解し、泥炭地は乾燥し、昆虫の感染症や火災による森林破壊が始まっている。
農業や林業、漁業、養殖業といった産業にも影響は出始めている。「気候変動により、北米各地で農業の生産性が1961年以降減少を続けています」と、要約の共著者である米コーネル大学農業生命科学部のレイチェル・ベズナー・カー氏は話す。(参考記事:「2050年にはコーヒーの栽培に適した土地が激減、気候変動で」)
気候変動と直接関連づけられる極端な気象現象も増えている。米ペンシルベニア州立大学地球システム科学センター長のマイケル・マン氏は、「現行のモデルは、気候変動が異常気象に及ぼす影響を過小評価し、さらなる温暖化によってその影響がますます悪化するであろうことを十分に予測しきれていません」と指摘する。
報告書は、熱波、干ばつ、洪水が「すでに植物や動物の許容範囲を超えており、樹木やサンゴなどの種の大量死を引き起こしている。これらの異常気象が同時多発的に起こっており、その影響が次々に波及して、人の手に負えなくなる恐れがある」と結論づけた。
からの記事と詳細 ( IPCCが最新報告書「気候変動の影響は想定以上に深刻」 - ナショナル ジオグラフィック日本版 )
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