【愛知】重要無形文化財保持者(人間国宝)に、名古屋市に住む尺八演奏家の野村峰山(ほうざん)(本名・正也)さん(65)が認定されることになった。文化庁からの連絡は出張先の携帯電話にあった。「大先輩のみなさんを差し置いて、まさか自分が人間国宝に……。喜びよりも驚きですね。承諾を伝える声が上ずってしまいました」
尺八の最大流派、都山(とざん)流を率いてきた。4年前に東京で発足させた「日本尺八演奏家ネットワーク」が一般社団法人になり、「流派の垣根を越えて尺八を盛り上げていきたい」と話す。
大仕事のひとつに、明治時代に都山流を開いた中尾都山が残した楽曲の整譜がある。本曲と呼ばれる尺八独奏曲など全28曲の縦書き和楽譜を、五線譜に書き直した。「指で音を切る尺八独特の瞬間音」についても楽譜に注記した。原曲に忠実な保存と継承をめざす労作だ。
単独演奏や和楽器合奏にとどまらず、オーケストラとの洋楽コンサートに参加して尺八の音色を披露してきた。創作も手がける。東京の有名な街路樹通りを表現した「街路樹」。宮沢賢治の童話にもとづく「かえるのゴム靴」。イースター島のモアイ像や、フランスのラスコー洞窟画を題材にした曲もある。
ジョイントコンサートにも新曲創作にも、「尺八の門戸を広げたい」「尺八の可能性を追究したい」という思いがこもっている。
三重県川越町生まれ。尺八愛好者だった父の手ほどきで小学5年から尺八に親しんだ。高校3年の1975年、大人にまじってただ一人、都山流全国大会に学生服姿で出場し、金賞をとって注目を浴びた。
高校卒業後、尺八一筋の日々が始まった。名古屋の箏曲家、野村正峰の養子になったのは20歳のとき。都山流の人間国宝、山本邦山に師事し、27歳で大師範、39歳で最高格の竹琳軒(ちくりんけん)大師範にのぼりつめた。
門人の演奏力を確かめる検定員を20代から務めてきた。名古屋を拠点に峰山会を主宰する。弟子は約50人。若者の挑戦を待ちわびる。
4年ごとの世界尺八フェスティバルをはじめ欧米や東南アジアで何度も公演してきた。その経験を踏まえて実感を語る。
「尺八の音は森や街を吹き抜ける風の音。それは誰もが親しめる音であり、尺八はすでに世界の楽器になっている。しかし日本ではお年寄りの楽器というイメージに縮こまっている。発祥の地で絶滅危惧種にさせるわけにはいきません」(佐藤雄二)
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