■ 中途半端な努力は
「やらずに後悔するより、やって後悔するほうがいい」
15年ほど前の話だ。駆け出しのコンサルタントだった時代、いつも私はこのような思考で現場支援に入っていた。行動しなければ意味がない。議論ばかりしていないで、とにかく動きだすことが先決だと。
しかしあるとき、先輩のコンサルタントに真っ向から否定された。
「中途半端な努力なら、やったほうが後悔する」
と。
「やるなら、やる。やらないなら、やらない。ハッキリしたほうが、後悔の質も、量も、減る」
と言うのだ。
言い返したい気持ちはあった。しかし、堪えた。コンサルタントとしての経験値があまりに違っていた。
だが、私は確信していた。「無駄な努力なんて1グラムもない」と。その価値観が、これ以降5年近くも、私を苦しめることになるとは知らず。
■ 報われた努力
「努力は必ず報われる」
大学も出ていないし、何も資格がない私のセミナー(定員230名 日経BP社主催)が、受付開始から約1時間でソールドアウトとなった。
2011年のことである。2時間2万円のセミナーが、これほど反響があったことは過去に例がないと、日経BP社の役員から言われた。
3月に東日本大震災があった後も、私への講演依頼はあとを絶たなかった。年末に発売した処女作『絶対達成する部下の育て方(ダイヤモンド社)』も売れに売れた。
最近になって、当時はどんな風だったかと取材されることがある。
これは本当の話だが、よく覚えていないのだ。長年つづけた努力が、実を結んだころだった。まさにがむしゃらだった。
「そうだ。無駄な努力など1グラムもない」
死に物狂いで走り続け、掴んだ自分の居場所に酔いしれていた。
それから、元ミュージシャンや、ブラック企業の営業を部下に招き入れ、彼ら彼女らも優秀なコンサルタントに育て上げた。
会社の業績も右肩上がり。本業であるコンサルティング事業も軌道に乗っていた。
■ コンサルタントは魔術師じゃない
ところが、しばらくして私は「曲がり角」に直面した。講演や出版活動は盛況だったし、研修やセミナー事業で十分な収益を上げることができていた。
しかしコンサルティング事業については別だった。気になることが出てきたのだ。支援する先によって、成果を出せる企業とそうでない企業とが、ハッキリと分かれてきたのである。
ある日、冒頭の先輩コンサルタントに、そのことを尋ねてみた。
「支援先によって、成果が出ないこともあるだって? 当たり前だろ。俺たちコンサルタントは魔術師じゃない」
「しかし、絶対達成をテーマに掲げている以上、クライアント企業の社長は、それを期待して当社に依頼してきます」
「じゃあ聞くが、入学する生徒を全員、東大に合格させられる予備校ってあるか?」
「い、いや……」
言葉に詰まった。たしかに、100%の成果をクライアント企業に約束することなどできない。しかし、それを簡単に認めていいのか。もっと自分たちに、できることはないのか。
私が返事をしないでいると、彼は微笑んで、こう言った。
「ずいぶん前、俺が言ったことを覚えているか」
私は顔を上げ、即答した。忘れたことはなかった。
「中途半端な努力は、やるだけ無駄」
「その通り」
いま聞いても、しっくりこない。多少は遠回りしたかもしれないが、学歴も資格もない私が、あらゆる目標を達成してきたという自負がある。
「結果的に、横山さんの努力は報われた。しかし、クライアント企業の社員たちはどうだ?」
考えを巡らせた。
たしかに、私たちはいろいろな成功を手にした。しかし同じような成功を、クライアント企業に対して提供できていないかもしれない。
「私たちが、クライアント企業に、中途半端な努力をさせてきた、ということでしょうか」
問い掛けてみたものの、彼は何も返してはくれなかった。それぐらい自分で考えろ、と言いたげだった。
■ 打ち切られる契約
今から約7年ほど前か。3社つづけて、クライアント企業から契約解除を言い渡された。それぞれの社長とは関係を構築できていたので、
「いろいろな事情を考慮して」
と言われての結果である。しかし理由は明白だった。目に見える成果があらわれない。だから、契約を切られたのだ。
目標を達成できない企業の特徴は掴んでいた。まず第一に、組織をまとめる中間管理職たちに、目標を達成させるマインドが薄いことが挙げられる。我々コンサルタントに対しても受け身で、当事者意識がない。
志望校に合格する気がない生徒たちと同じだ。
だから、契約を途中解除したいと言ってきた社長たちは、こぞって私に謝ってきた。
「マネジャーたちに危機感がないのは、社長である私が、甘やかせてきたのが原因です」
「当社はコンサルティングを受ける以前の問題です。まるで基礎ができていない」
頭を下げる社長たちに、複雑な思いを覚えた。本当にそうなのだろうか。すべてクライアント企業に「非」があったのか。我々の支援に、問題はなかったのか。
■ 転機
そんな私に転機が訪れた。あるIT企業とのコラボレーションセミナーがきっかけだ。
年間10回以上、一緒にセミナーを実施しようと企画していたのだが、たった2回でその企画はボツになった。なぜなら集客目標をまるで達成できなかったからだ。
相手は(当時)六本木ヒルズに本社をかまえるような、有名企業である。
先方の担当者は、この企画にとても前のめりで、気合い十分。年間1000名は動員したいと気勢を上げていたので、私もかなり期待していた。しかし2回で合計40名ほどしか集客できないのだから、企画がボツになってもしかたがない。
がっかりした。
なぜだ。
なぜ、そんなに、集まらないのか。
六本木ヒルズ・ウエストウォーク1階にあるスターバックスで、ぬるくなったエスプレッソを飲みながら、私はそう思った。
「絶対達成というテーマに問題があるんでしょうか」
担当者が私に質問するので、すぐに違和感を覚えた。
テーマ……?
金融機関や、出版社と同テーマでセミナーを企画すれば、チケットは飛ぶように売れた。実際に、当社が毎年手掛ける「絶対達成LIVE」は、日本全国で開催し、600名以上は動員している。
テーマに問題があるはずは、ない。だが――。
ピンときた。
そして、どうしてこんな単純なことに、気付かなかったのだろう、と私は後悔した。
エスプレッソのカップを脇にどけ、身を乗り出して、どんな方法で集客してきたのかを尋ねてみた。
「どんな手法で……って」
「毎回100名は集めましょうって言ってましたよね。どうやって集めるつもりだったんですか。その方法を教えてください」
雨の降る日だった。薄暗い六本木ヒルズのスターバックスで、私は彼の話に耳を傾けた。
そして、その回答をきいて「やはり」と思った。
ああ、そうか。だから、集客がまるでできなかったのか。
彼の言うやり方は、日経新聞を含む新聞5紙と、インターネットを活用した各種広告の掲載、そして自社ホームページ、メルマガでの掲載ぐらいだった。
けっこうお金をかけてくれたようだが、これではダメだ。というか、よくこれで、40名も集められたものだと思った。
そして確信した。
この人は「集客のキホン」を、まるでわかっていない、と。
認知度アップと集客は違う。個人と組織人の特性も違う。テーマによって広告媒体も変えなければならないし、それに何より大事なのはプロモーションの組合せと相互連携だ。
特性やパターンによって、戦略もツールも変わることを知らない。彼はどのようなテーマでも、どのような対象者でも、同じやり方で集客してきたのだ。これまで。
何年もの間、ずっと晴れなかった心の中のモヤモヤが、すーっと消えてなくなっていく感覚を覚えた。
そうか。
そういうことか……。
常に、目標の「絶対達成」を意識している人間と、そうでない人間とでは、こうも思考も、戦略も、異なるものなのだ。
正しい思考、正しい戦略がないのに、がむしゃらに努力したって無駄。どんなにお金をかけても無駄。単なる自己満足に過ぎない。
そうなのだ。つまり、これが無駄な努力ということなのだ。
これをきっかけに、これまでの支援先での出来事を探ってみた。コンサルティングレポート等を読み返してみた。
「抜けていることが、膨大にあるはず」
私や、私の部下は、どんなに高い目標でもだいたい達成させられる。なのに、支援先の企業は、できたり、できなかったりする。
この差は、大きい。
経営には「勝利の方程式」などない。だから仮説と検証を繰り返してきた。うまくいくことも、うまくいかないことも、膨大に経験した。
有名ビジネス書に書かれてあることが「キレイゴト」だと発見できた日もあった。西欧では一般的なフレームワークが、日本企業では通用しないとわかった日もあった。
日本企業において、普遍的で、再現性が高いノウハウとは何か。時代に合わせて変化が求められるテクニックとは何か。
10年以上の現場体験から、たどり着いた答えを、それぞれのパターンごとに分解し、メモ帳に書き出していく。
■ 血と骨を言語化する
何冊ものメモ帳を使った。大量のメモで視界が埋まった。メモの海に両手を突っ込み、それらのメモを仕分けした。1時間かけて13分類にまとめた。ざっと、メモの塊を眺め、足りないと思えるものをさらに書き出した。最終的に15種類にカテゴライズした。
私どもが生み出した目標達成メソッド(予材管理)は、16年間変わらないままだ。しかし大きなフレームワーク、仕組みは変わらないままでも、それぞれの企業によって、ちょっとした秘訣、ちょっとしたノウハウが足りないと、最終ゴールを遠ざけてしまう。
そう。やっても意味のない「自己満足型の努力」となってしまうのだ。
私どもは常に現場にいる。現場は戦場のようなものだ。外部環境が変化すれば、1年前のノウハウも通用しなくなる。
その最前線で、目標を達成させるための秘訣、ノウハウ類は、常時アップデートしてきた。そしてそれらは、私たちの血となり骨となって身についていた。
その「血」と「骨」を、誰にもわかるようなカタチで言語化するのだ。自分たちだけで独り占めにせず、多くの人に分け与えるのだ。
その後、私たちが編み出した、さまざまな思考と戦略は、多くの企業を成長させた。もう二度と契約を切られることなどなかった。
■ 本気で結果を出したい人へ
2019年4月、ついに働き方改革時代が本格的にスタートした。
どの企業も、生産性アップに躍起になっている。もう、数年前までは許された、自己満足型の努力など、している暇はない。
先述したとおり、私はこれまで、さまざまな企業でコンサルティングを行ってきた。「絶対達成」メソッドをもとに、1000回以上の講演をし、また、書籍の執筆も行なっている。
ただ、やはり、絶対達成の思考について、最新の研究結果を教えてほしいという声を多数いただく。時代の流れによって、戦略は常に変わり続けているからだ。最新情報をお伝えするに越したことはない。
そこで今回、この『本気で結果を出したい人のための「絶対達成」の思考と戦略レポ』を有料記事として配信することにした。
現場体験で、日々アップデートされる思考、戦略について情報発信していくつもりだ。これを読んでいる人の中には、今、なかなか目標達成できなくて悩んでいる人も多いだろう。しかし、必ず突破口はある。
最適な努力をし、結果を出すために、一緒に学んでいきましょう。
タイトルどおり、本気で結果を出したい人のみ、ご登録ください。どうぞよろしくお願いいたします。
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